ニューヨークで開催6年目を迎えた日本酒フェス「World Sake Day」が、9月27日に行われ、今年も盛況のうちに幕を閉めた。トレンドの移り変わりが激しいこの街で、毎年日本酒好き、そして酒蔵が集い催されるこのイベントは、日本酒をキーに人と人がつながる不思議な魅力がある。レポートと共に、当日の様子をお届けする。

 「World Sake Day」にて、Kato Sake Worksを営む加藤忍さん(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)

「年に一度の同窓会のような感覚も」

2021年にスタートした同イベントは、かつてブルックリンのブッシュウィックで日本酒バー「Mika Bar」を営んでいた古矢美花さんが手がけるイベント。「日本酒を通じて日本の食文化、職人文化、そして人と人とのつながりをニューヨークで発信したい」との思いで毎年続き、今年で6回目の開催を迎えた。

乾杯!と盛り上がる来場者たち(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)

「今年は日本から酒蔵や飲食関係の方々にも参加していただき、少しずつイベントのつながりが広がっていることも感じました。6年続けていると、毎年来てくださるお客様や参加者、チームとの年に一度の同窓会のような感覚もあります。今年もみんながこの場所に戻ってきて、また一緒にこの時間を共有できたことをとても嬉しく思います」と、古矢さん。

左からオーガナイザーの古矢美花さん、在ニューヨーク総領事・大使の片平聡さん(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)

日本酒も“るつぼ”なNY

イベント中は、スタンプカードを片手にずらりと並ぶ酒蔵ブースを周り、気になった銘柄をテイスティングしていく。実際に酒を造っている人々からグラスに注いでもらえるため、どのように造られているのか、背景や歴史なども聞けるのが面白いポイント。

入場時にスタンプカードとグラスが配布される(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)

また、さすがは人種のるつぼ、ニューヨーク。人々だけではなく、さまざまなバックグラウンドを持つ日本酒が一挙に集うのも楽しみどころの一つとなっている。

ポップなパッケージが印象的なProper Saké Co(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou

八海山に久保田、菊水や剣菱といった日本では知名度の高い銘柄と一緒に並ぶのは、ブルックリン生まれのKato Sake WorksやBrooklyn Kura、またメキシコ発のNAMI、シャンパーニュのアッサンブラージュの発想を取り入れ、今アメリカで高い人気を誇るIwa、ワインのようなパッケージが特徴的なナッシュビル発のProper Saké Coなど、ユニークなラインアップ。テイスティングを通してさまざまな土地を旅しているような感覚にもなれるのが面白い。

缶の日本酒でお馴染みの菊水(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)
メキシコ北西部、シナロア州のクリアカンで醸造されているNAMI(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)

「飲んで終わりではなく、その先へ」

また今年は、そんなバラエティ豊かな日本酒との接点をより深めたいと、その場でオーダーできる仕組みも導入。「一般向けのテイスティングイベントは、どうしても『美味しかった』で終わってしまいがちで、そこから実際の消費につなげることがずっと課題だと感じていました。毎年『このお酒は買えないの?』という声も多いのですが、ライセンス上、私たちが会場で直接お酒を販売することはできなかったので、今年からAmbassador Winesと提携し、気に入った日本酒をその場でオーダーできる仕組みを作りました」

来場者と酒蔵関係者の”近さ”も魅力の同イベント(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)

「飲んで終わりではなく、その先の消費につなげ、最終的に造り手や日本酒を届ける方々に還元する。今年始めたこの仕組みを、今後さらに育てていきたいです」と話す古矢さん。来場者の声を新たな形に、より日本酒と深く関わり合えるイベントへと進化を遂げている。

6年続く、モチベーションとは?

日本酒バーMika Bar、そして同イベント。日本酒をキーワードに、ニューヨークという街で新たな化学反応を生み出し続ける古矢さん。

「今回、『去年来て良かったからまた来た。今年もこんな楽しい会をオーガナイズしてくれてありがとう』と声をかけてくださった方がいたんです。とても嬉しく、続けてきてよかったと思いました。また、『新しいお気に入りの日本酒を見つけた』という声もたくさんありました」

今回出展したベンダーや関係者たち。空間造りやインスタレーションを担当するのはデザイナーの川崎いくまさん(photo: World Sake Day / Ayoub Yechou)

「来てくださった方から『来てよかった』『楽しかった』と言っていただいたり、参加してくださった酒蔵やディストリビューターの方からも『参加してよかった』と言っていただける。関わってくださった皆さんが喜んでくれることが、6年間続けてきた一番のモチベーションになっていると思います」

参加する来場者、酒蔵の人々、みんなが楽しくほろ酔いになれるイベント。また来年、ここでどんな出会いが生まれるのか楽しみにしたい。

取材・文/ナガタミユ