アメリカの新学期が9月、スタートする。しかし、日本の「今日から新学期」といった明るさはあまりない。特に小学1年生を校門で見送る父母の不安そうな姿は毎年、ニュースで大きく取り上げられる。教師や同級生とうまくやっていけるのか、言葉の問題はないか、など心配は絶えない。今年はさらに、トランプ政権の不法移民政策に対する懸念が大きくのしかかった。新1年生だけでなく公立校に行く子どもの多くの父母が、わが子が拘束されないかという不安を抱え、新学期に大きな影を落としている。

新学期に備えてショッピングをしているソフィアさんは、ややパニック状態だった。長男が小1になる。ウェブで入手した学用品のリストが膨大で目を疑った。安売り店でカラーファイルを6点選ぼうとしているが、長男も買い物の多さに圧倒されて選ぶことができない。
彼女はイタリア系、夫はヒスパニック系で正規の滞在許可を持っている。しかし、移民が多い小学校に入学するため、長男は「私よりも肌の色が濃い。移民税関取締局(ICE)が来て、他の子と一緒に捕まったらどうしよう」と涙目だ。
特に正規の滞在許可を持たない父母の場合、新学期のストレスはマックスだ。8月下旬までに移民裁判所のヒアリングに出廷した公立校の生徒が報道ベースで数人がICEに拘束された。裁判所内で摘発が可能であれば、学校は安全なのかと不安は募る。

これに対しニューヨーク市教育局(DOE)の広報官は声明で滞在許可の有無にかかわらず、全ての子どもが入学・進学できると確約した。「私たちの学校は安全だ。父母は、子どもらがきちんとした扱いを受け、貴重な存在だと思われる学校に通わせ続けるべきだ」
ニューヨーク市では、連邦職員であるICEが公立校に入る場合は、判事が署名した緊急の場合の捜索令状を見せなければならないことになっている。しかし、トランプ政権は今年始め、学校、医療施設、裁判所を捜索対象の例外とはしない方針を打ち出している。カリフォルニア州では、ICEが学校敷地内に入ろうとしたケースが報告された。
ソフィアさんは「学校にICEが来ないように毎日祈るしかない」と話した。
取材・文/津山恵子
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