連載1017 2070年人口3割減8700万人の衝撃 じつは実際はもっと深刻! (中1)

連載1017 2070年人口3割減8700万人の衝撃 じつは実際はもっと深刻! (中1)

(この記事の初出は2023年5月9日)

 

ありえない外国人人口の増加

 もう一つ、社人研の予測が大甘すぎる点は、総人口に占める外国人の割合が、2020年の2.2%から2070年には10.8%に増えるとしていることだ。外国人の入国超過数をコロナ禍前の状態が続いたと仮定し、前回推計(2017年)の年間7万人から16万4000人に増えると見積もっている。その結果、1億人割れの時期は3年遅くなるとしているのだ。
 今後の移民政策がどうなるかはわからない。ただ、少なくとも現時点で世界有数の給料安の国になっている以上、今後、労働移民が来ると考えるほうがおかしい。
 むしろ、将来を悲観して、この国を出ていく人間のほうが多いだろう。
 ところが、「時事通信」の配信記事(4月28日)のタイトルは、「少子化対策、問われる実効性 外国人受け入れも焦点に 人口減・高齢化で課題山積」となっていて、次のような記述がある。
《出生率の大幅改善が見通せない中、働き手となる外国人の受け入れは一つの選択肢となり得る。しかし、外国人労働者の受け入れが「事実上の移民政策」につながる懸念も根強く、厚労省幹部も「国民的議論が必要」と話す。》
 いまだにこんな考えの厚労省幹部がいるかどうかはわからない。いたとしたら、その人間はファンタジーワールドに生きているとしか言いようがない。

「意図的な予測操作ではないか」という声も

 それにしても、社人研の出生数の推計は、毎回のように実績値を下回るという。そのため、これまでも推計の甘さをたびたび指摘されている。人口推計は、年金財政の検証に利用されるので、「政権に都合のいい数字を出すための意図的な予測操作ではないか」といった見方もある。
 捏造、忖度が横行する政府だけに、あり得ないことではない。
 加藤勝信厚生労働相は、人口推計発表後の記者会見で、「年金財政に与える影響は限定的」と述べたうえで、出生率の低下がマイナスの影響を与えるが、その一方で外国人が増加するため、全体では前回推計から大きく変化しないと、社人研の見方を追随した。
 厚労省では、この推計値を基に、来年、年金の将来見通しを公表する予定になっている。すでに、破綻間近とされる年金財政がどうなるかは、年金受給者だけの問題ではない。将来の受給者も含め、日本人全員の問題だ。
(つづく)

この続きは6月9日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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