人生の中で大切な一度の食事 ─ うまいものをうまい酒と
もはやイーストビレッジは、タトゥーやピアスをした若者だけの街ではなくなりつつある。雑踏から少し離れた場所にはひっそりと、しかし存在感のある日本食の店ができ、この街でレストランを構える欧米人のオーナーやシェフの間ではちょっとした噂になっている。
そんなイーストビレッジにまた一軒、いい店が暖簾を上げた。7月23日開店の「Cagen」だ。オーナーシェフの冨田登志男氏は、米国に移り住んではや28年。15歳で料理の世界に足を踏み入れ、米国でのこの16年間はあのセレブ御用達の「NOBU」で腕を振ってきた。
冨田氏が店を開いたのは、「人生の中で食事をする回数は、1日たった3回。ならば、毎回うまいものを食いたい。何か一品で腹一杯になってしまうのも、もったいない。いろんなものを少しずつ食べながら、うまい酒を飲みたい」という自らの夢を叶えるためだった。店名には「ちょうどいい加減」「いい頃合い」といった意味が込められている。
カウンターに座ると、前菜から驚かされることになる。その日の仕入れや季節の旬によって変わる3種類の「おまかせ」メニューが基本だが、漆の半月盆には、冨田氏が竹を割って作った箸置き。そんな「和」の空間に、なんとハムカツ、夏野菜のガスパチョ、鴨の塩焼きのそばクレープ包み、ゴーダチーズとホワイトチョコレートなどが並べられる。
北海道や茨城のそば粉を使った冨田氏手打ちのそばをすすれば、「コシがある」という言葉の本当の意味を思い知らされることになる。この日の焼き物は、かます。皮はパリッと身はふっくらといい具合に焼かれ、食欲をそそる。日本から仕入れているこだわりの魚や地元の新鮮で珍しい魚を使って目の前で握られる寿司に、もう唸るほかはない。
冨田氏が口にしたとおり、うまい肴がいろいろと少しずつ、ちょうど良いテンポで出され、酒と「至福の時間」に心から酔うことができるのだ。これまで冨田氏が積み上げてきた経験と人脈の全てが、料理という「かたち」となってその日のゲストに供されている。
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「どんな店でありたいか」という問いに「うまいものを出し続ける店」と間髪入れずに答えた冨田氏の目は少しも笑っていなかった。スシやラーメンが確実に市民権を得ているこのニューヨークで、次に来るのは「割烹(カッポウ)」なのかもしれない──。
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献 立
季節のおまかせ 60ドル
(前菜、刺身、焼き物、手打ちそば)
シェフのおまかせ 80ドル
(前菜、刺身、手打ちそば、揚げ物、焼き物、寿司、デザート)
Cagen流おまかせ 100ドル
(前菜、刺身、手打ちそば、揚げ物、焼き物、寿司、デザート)
Cagen
414 E 9th St(bet 1st Ave & Ave A)
212-358-8800
www.cagenrestaurant.com
営業時間/5:30pm~11:30pm 定休日/月曜
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