滝川玲子弁護士の“遺言や財産について、今から知っておこう。賢く、遺産相続” Vol.4 事前指示の書類と委任状

 事前指示の書類と委任状は前もって適切に作成されていないと、万一の時に事務処理をする後見人(Guardian)を指名してもらう必要があるなど、ご家族や周りの人たちに負担をかけることになりかねません。そこで、事前に作成しておくことをおすすめする3つの書類と委任状について、ご説明します。

◆医療委任状(health care proxy)
 自分の意思を言葉にすることができない場合に、自分に代わって、医学的処置など医療に関する決定を下す代理人を指名する文書です。医療委任状に関して、ニューヨークでは、2010年3月に公衆衛生法が改正され、本人に決定能力がないと判断され、医療代理人が指名されていない場合の手続が設定されました。しかし、それによると、法律で決められている順序に従って医療機関等がサロゲート(代理人)を決定しなければなりません。医療委任状のもと、事前に自分の意思によって、自分の意思を良く知っている人を医療代理人に指定しておくことが望ましいです。

◆リビングウイル(living will)
 いわゆる持続的な植物状態(脳死)に陥った場合に、生命維持措置をどうして欲しいか、ご家族や医療関係者に対して、自分の意図を明確にする書面です。

◆委任状(power of attorney)
 自分の事務処理ができなくなった場合に、自分に代わって、財政的な決定を行う代理人を指名する文書です。
 委任状に関してニューヨークでは、代理権を与える本人をより良く守れるようにする意図により、09年9月と10年9月に、法律とフォームの変更がありました。

 これらの書類は本人の生存中に有効で、本人が亡くなると代理人の権限は失効します。
 なお、リビングウイル、医療委任状、委任状には、医療関係者による個人情報の開示に関して、新しい Heatlh Insurance Portability and Accountability Act(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律、略称 HIPAA)法に従う適切な条項が挿入されていなければなりません。

※上述はあくまでも一般的な説明であり、個々のケースによって手続な どは異なりますので、必ず法律専門家に相談するようお願いします。


滝川玲子(たきかわ・れいこ)
ウインデルズ・マークス・レーン・アンド・ミッテンドルフ法律事務所パートナー、ニューヨーク州弁護士。上智大学外国語学部英語学科、同法学部国際関係法学科卒業後渡米、ニューヨーク大学ロースクール法学修士。日米両国の弁護士事務所の他、日本企業での勤務経験もある。総合法律事務所のニューヨークオフィスにおいて、遺書・遺産に関する法律を中心に、日米両国のクライアントをもつ。現在JAAにおいて、2ヵ月に一度の無料法律相談を担当。
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