TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.12 会社員並びに個人の事業主が利用できる 「退職後用積立口座(Retirement Plan)」パート⑧

設問:201X年、Aさん(50歳)は、15年前に開設して積み立ててきたRoth IRA口座から、2万ドルを「引き出し」ました。

その時点での口座残高は10万ドルでした。内訳は、積立額合計が6万5000ドルで運用益合計が3万5000ドルの、計10万ドルです。さて、Aさんがこの年度に引き出した2万ドルの内、確定申告書で課税対象となる額はいくらでしょうか? また早期引出(59・5歳未満引出)に適用される「10%のペナルティ額」はいくらでしょうか?

問29:確か、Roth IRA口座への積立額は、T―IRAへの積立額とは異なって、積み立てた年度に、既に税金を支払った後の給与一部がそれにあたるということで、一度税金を払ってあるので、将来引き出す際には課税の対象とはならない(税金は払わなくてもよい)、とのことでした。思い出しました。
解答:その通りです。従ってこの事例では、引き出した2万ドル全額が、引出時の年齢に関係なく非課税(収入として申告書に入れなくてよい)扱いとなります。そして、「ペナルティ」に関しても、そもそも引出額が課税の対象とならないので、年齢が60歳前でも支払いが発生しません(∵0ドル×10%=0ドル)。では、Aさん(50歳)はこの時点で、いくらまで税金(所得税+ペナルティ)を払わないで、Roth IRA口座から一度に引き出すことができますか?

問30:そうすると、積立額全額が非課税となるので、6万5000ドルまでですか?
解答:正解です。そして、Aさんが積立額を全額引き出してから10年後の59・5歳に達してから、その時点(この例では、Roth IRA口座は、開設して既に25年超経過しています)で、口座の運用益全額(仮に3万5000ドルから5万5000ドルに増加していたとして)を引き出しても、全額非課税扱い(その年度の課税対象額から外れる)となります。なぜなら、2つの条件(年齢59・5歳超+開設5年超経過)を同時に満たした上で運用益を引き出しますので、運用益全額の5万5000ドルを、一度に引き出したとしても税金を払う必要がなくなります。

問31:なるほど。それでRoth IRAを「積立時課税・引出時非課税型」と特徴付けるのですね。「First-in, First-out」ルールと「運用益引出」特別ルールとを上手く組み合わせれば、かなりの節税をすることができますね。やはり情報・知識は重要です。
解答:その通りです。特にRoth IRAは奥が深いですので、上手に活用してください。

問32:では引き出しに関して、両口座の特徴をまとめてください。
解答:T―IRAは「積立時非課税・引出時課税型」ですので、基本的には、引き出し額全額が所得税の対象となり、59・5歳に達しない場合の引き出しは、所得税に加えてさらに、引出額の10%分のペナルティを支払うことになります。一方、Roth IRAの場合は、59・5歳に達しないうちから、それまでの積立総額(元本)までは、所得税もペナルティも払うことなく引出をすることができます(「First-in, First-out」ルール)。そして、59・5歳に達しなおかつ、口座開設5年を過ぎた時点で、引き出しをすると、引出額全額(その後の積立額はもちろん運用益全額)が課税の対象から外れるので、所得税を支払う必要が無くなる、以上です。(次回に続く)


Financial Advisor / Tax Specialist
羽山 徹
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