大竹彩子(焼酎&タパス 彩) 焼酎ソムリエの「つまみになる話」毎月第4月曜号掲載 最終回 ハワイで造られる幻の芋焼酎「波花」

 焼酎といえば日本が誇る蒸留酒ですが、なんとアメリカで造られている近年日本で話題沸騰の芋焼酎があります。ホノルルから車で1時間弱、オワフ島のハレイワというのんびりとした古き良き町にその焼酎蔵Hawaiian SHOCHU Companyはあります。ある日本人ご夫婦が2人きりで製造から瓶詰めまで行う「波花」は、隠れたアメリカ産本格焼酎で春と秋に年2回行われる出荷は1回3000本の合計6000本のみ。どんな焼酎蔵の出荷量よりも少ない、まさに人生で一度一杯飲めただけでも奇跡と呼べる量といえます。

 2013年秋に発売され、まだ5回しか出荷されておりませんが、そのお味の噂はハワイでも日本でも一気に広まり、ハレイワの同蔵にて完全予約販売にも関わらず、たった2カ月で完売するほど。原料は米麹に使う最高品質のカリフォルニア産日本米に、毎回芋の種類は変わるもののハワイ産沖縄紫芋が中心。麹も春仕込み(秋出荷)のものには黒麹を、秋仕込み(春出荷)のものには白麹を使用し、毎回違った味を楽しめるのも粋。
 30度とちょっと度数高めのこの「波花」を生んだ蔵のオーナーであり杜氏でもある平田ご夫妻が同焼酎を造るきっかけになったのは、ハワイ旅行中にポイというタロイモを発酵させたハワイ伝統料理を食べた時。ハワイの芋を使って焼酎を造れるのでは、とその時のひらめきを約10年越しに叶えることとなりました。焼酎を造るのは初めてで、伝統の蒸留法で上質な本格焼酎を造るため鹿児島の名蔵「万膳酒造」で一から修行をされたというからびっくり。その時の師匠から譲り受けた100年以上前に日本で作られた伝統の瓶壺をハワイに持って来て「波花」造りが始まりました。一つ一つ手作業で丹念に造られるこの焼酎は芋の旨味を最大限瓶の中に残すため、蒸溜後、無濾過にて瓶詰め。飲む前に少し振り、沈殿しているわずかな芋と一緒に飲むことができます。
 実は私もまだ飲んだことがなく、ことしはハワイに訪れ、こちらの蔵で是非平田ご夫妻からお話を聞きながらこの奇跡の一杯に預かれる日が来たらと今から楽しみです。

本日の〆
今回ご紹介の「波花」は瓶売りこそ蔵まで足を運ばなければ入手できないものの、グラスで一杯という方はホノルルを始めとし、ハワイの幾つかのバーや日本食レストランなどを中心に見つけることができるとのこと。ハワイ旅行のご予定がある方はぜひ、探してみてください。


大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。

焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
212-715-0770 www.aya-nyc.com