米国公認会計士 西村勝也が解説 不動産所得と税金について(前編)

2015年度の確定申告(タックスリターン)が始まりました。不動産をお持ちの方に役立つ税金に関する疑問を、米国公認会計士・西村勝也がお答えします。

米国の居住者(グリーンカード保持者)です。昨年、米国国内に投資目的で居住用の賃貸不動産(一軒家)を購入し、日本人駐在員の方に貸し出しました。今回の確定申告時に、この不動産所得を含めて税務申告書(Form 1040)を作成するにあたり、気を付けなければならない点を教えてください。

Q1.家賃収入について注意する点は?

 2015年中に受け取った全ての家賃を収入に含めなければなりません。例えば、昨年の12月に受け取った家賃が翌年1月分だったとしても、昨年度の家賃収入に含まれ課税対象となります。また、敷金(Security Deposit)でも、リース期間の終了時点でテナントに全額返還されるのものは家賃収入に含まれませんが、返還する必要がなかったり、あるいはリース期間の最終月の家賃として充当されるような契約になっているものは、それを受け取った年度での家賃収入となります。契約書でご確認ください。

Q2.必要経費にはどのようなものがありますか?

 一般的なものとして、次の経費が認められています。
•広告宣伝費 (Advertising)
•車両関連費及び旅費(Auto and travel expenses)
•清掃維持費 (Cleaning and maintenance) •支払手数料 (Commissions)
•減価償却費 (Depreciation)
•保険料 (Insurance) •支払利息(Interest)
•弁護士、会計士などの職業専門家への報酬(Legal and other professional fees)
•交通費 (Local transportation expenses) •管理費 (Management fees)
•モーゲージ利息 (Mortgage interest paid to banks, etc)
•ポイント (Points on Loans)
•賃借料 (Rental payments)
•修繕費 (Repairs)
•租税公課 (Taxes)
•水道光熱費 (Utilities)

 必要経費になるものでも、支払額のうち、その全額が一度に経費になるとは限りませんのでご注意ください。例えば、保険期間が一年を超える保険料を前払いしても、支払った年度で全額控除することはできず、その年度で計上した家賃収入に対応する期間分の保険料しか経費として認められません。
 また、ポイントとはローンの契約時に有利な条件で借入ができるように支払う前払利息のことですが、これは、そのローンの返済期間にわたり、一定の方法で費用化していくことになります。
 建物部分のコスト(Cost Basis)については減価償却という手続きを通じて、その耐用年数(Recovery Period)にわたって費用を計算していきます。居住用の賃貸不動産の場合、耐用年数は27・5年です。建物部分のコストには、購入代金のほかに、不動産の権利関係調査のための費用(abstract fees)、権原保険(Title Insurance)、登記費用(Recording Fee)、不動産譲渡税(Transfer Tax)などの譲渡契約時に生じる費用やそのほかの付随費用も含まれます。なお、土地部分については減価償却の対象になりません。
 これら必要経費を合計し、家賃収入から差し引き、不動産所得を計算します。「Schedule E」という用紙に記入し、Form 1040に転記して税額を計算します。
※この記事は一般的な事例について記述したものであり、個別の事例については、専門家にご相談ください。また、この記事が基で損害が生じたとしても、責任を負うことができません。

西村勝也(米国公認会計士)
日、米、両国での経験を生かし、米国に進出した日系企業及び日本に進出した外資系企業を、会計、税務の面でサポートしている。

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