能と狂言の幽玄な世界を体験 アジア・ソサエティー

 マンハッタン区のアジア・ソサエティーで2月28日、能と狂言のレクチャーイベント「Theater Japan/NOH and KYOGEN」が行わ
れた。
 1日にカーネギーホールで行われた、能、狂言、歌舞伎が一挙に開催される「市川海老蔵 グランド・ジャパン・シアター」に出演した演者らが、古典芸能のひと味違った楽しみ方を、トークやデモンストレーションで紹介した。
 実の親子でもある能楽囃子・葛野流大鼓方の人間国宝亀井忠雄さんと歌舞伎囃子方の田中傳次郎さんによるトークコーナーでは、伝統芸能を継承する家ならではの幼少期の稽古エピソードなどを披露。次に、観世流シテ方能楽師の坂口貴信さん、谷本健吾さんは能独特の「構え(姿勢)」と「運び(所作)」を実演し、その後には、外国人男性客を壇上に招いて、能の衣装、かつら、能面の装着など着付けの実演を行った。
 最後は、能の人気演目「土蜘蛛」の一場面をダイジェストで紹介。見せ場である蜘蛛の糸を投げるシーンでは、糸が会場全体を包み、客席からは歓声が沸いた。古典芸能との貴重なふれあいとなった同イベントは、スタンディングオベーションで盛況のうちに閉幕した。
 歌舞伎ほど派手ではない能や狂言に注目し、主役を支える立場の大鼓方、囃子方がさまざまな知識を外国人来場客にも伝える機会となった当日。ただ舞台を見るだけでは分からない面白さを見出すことができる、奥深いイベントとなった。

3歳から鼓の稽古を始めたと語る田中傳次郎さん(左)と、父であり人間国宝の亀井忠雄さん(右)(photo: Daily Sun)