米国公認会計士 西村勝也が解説 不動産所得と税金について(後編)

2015年度の確定申告(タックスリターン)の締切が迫ってきました。不動産をお持ちの方に役立つ税金に関する疑問を、米国公認会計士・西村勝也がお答えします。

 米国に所有する不動産の不動産所得が赤字になった場合、そのほかの所得から差引くことはできますか? また、米国の居住者と日本の居住者での違いを教えて下さい。

米国の居住者(グリーンカー ド保持者)の場合

Q1.米国国内に居住用の賃貸不動産を持っており、貸し出しています。確定申告で不動産所得が赤字になるのですが、給与所得(W-2)から差し引くことができますか?

 家賃収入は受動的所得(Passive Income)と呼ばれ、そのような受動的活動からの損失(Passive activity Loss)は、原則として、そのほかの受動的活動からの利益(Passive activity Income)からしか差し引く(損益通算)ことができません。ただし例外として、もしあなたがその賃貸不動産の10%以上を所有しており、新しいテナントの承認、レンタル条件の決定、支出の承認、修繕などの業者への依頼に、積極的に関与(Active Participation)している場合、2万5000ドルまでの損失について、給与所得などとの損益通算が認められます。なお、一定の高額所得者については、この損益通算について制限が設けられており、相殺が認められない場合があります。
 このように、損益通算が認められる場合と認められない場合があることにご注意ください。

日本の居住者の場合

Q2.日本からの直接投資で米国内に一軒家を購入しました。年に数回、保養のために滞在する以外は人に貸し出しています。この不動産所得について日本で確定申告をしなければならないのですが、日米の税法の違いによって、日本では赤字となってしまいます。この不動産所得の赤字は、私が日本で受け取る給料所得から差し引けますか?

 日本において不動産所得の赤字は、給与所得、事業所得、雑所得、譲渡所得(一定のもの)などと損益通算ができます。しかしながら、この損益通算は、全ての不動産所得の赤字について認められているわけではありません。
 まず、土地などを取得するために要した借入金の利子がある場合は、その借入金の利子相当額が損益通算の対象になりません。また、生活に通常必要でない資産の貸付に係るものなども対象外です。
 ご質問のケースは、その投資物件が別荘と見なされてしまう可能性があります。その場合は、給与所得などとの損益通算は一切認められません。
 投資が目的なのか、それとも趣味や娯楽、そのほかの目的なのかが、重要なポイントになることもあり得ますのでご注意ください。
 個別の事例についてはそれぞれの状況で異なりますので、必ず専門家のアドバイスを受けてください。

※この記事は一般的な事例について記述したものであり、個別の事例については、専門家にご相談ください。また、この記事が基で損害が生じたとしても、責任を負うことができません。

西村勝也(米国公認会計士)
日、米、両国での経験を生かし、米国に進出した日系企業及び日本に進出した外資系企業を、会計、税務の面でサポートしている。

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