第2回 「解熱・鎮痛剤」 OTC101ファーマシー探訪 with ひぐち先生

higuchisensei日本の薬剤師・薬学博士で、現在コロンビア大学で博士研究員をする樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身まだ在米2年。米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」

第2回 「解熱・鎮痛剤」基本の有効成分は4つ
OTCの解熱・鎮痛剤の有効成分は、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキシン、アセチルサリチル酸(アスピリン)の4つに限定されます。これらが「タイレノール」や「アドビル」「アリーブ」「ベイヤー」などの商品名で売られているのです。胃腸障害のある人は要注意ですし、OTCとはいえ常用しないよう心がけてほしい薬です。

①大人用
鎮痛剤の箱によく「NSAID」と書かれていますが、エヌセイドと読み、これは「非ステロイド抗炎症剤(Non Steroidal Anti-Inflammatory Drug)」の意味です。代表的な3薬は、アスピリン(商品名「ベイヤー」他)、イブプロフェン(「アドビル」他)、ナプロキシン(「アリーブ」他)。解熱や筋肉痛、生理痛の緩和に大変効果的ですが、胃粘膜の保護物質を阻害するため、食後に服用することを勧めます。食後の服用が困難な場合は、多めの水と一緒に服用することで胃腸障害を回避できることがあります。一方のアセトアミノフェン(「タイレノール」他)は、主に脳で作用するといわれています。他の鎮痛剤と比べて胃腸障害の危険性が低いのが特徴ですが、効き目は他の鎮痛剤より若干弱いです。経口薬はまず肝臓で代謝されます。鎮痛剤を服用中は、肝臓の代謝酵素に影響を与えるお酒を飲まないようにしてください。
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②子ども用
小さい子ども用の解熱・痛み止めの有効成分は、必ずアセトアミノフェン(「タイレノール」他)です。胃腸への負担を考え、最も安全だとされるからです。フルーツ味の噛むタイプ(chewable)とシロップがあり、保存を考えると噛むタイプ、早く効くことを優先するならシロップと、目的に応じて使い分けましょう。シロップは、一度開けると唾液や指などで汚染されやすいので、余ったら捨てる方が賢明です。噛むタイプは、おいしいので子どもがお菓子と間違えてボリボリ食べないよう、きちんと管理してください。子どもが薬を吐いてしまうときや高熱を早く下げたいときは座薬(suppository)です。これも成分はアセトアミノフェン。乳幼児がいる家庭は常備しておくといいでしょう。乳幼児よりも大きい子ども用(2〜11歳)には、効き目が強いイブプロフェンが有効成分のものもあります。
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③片頭痛と夜間鎮痛剤
片頭痛(migraine)用のOTC鎮痛剤があります。最も知られているのが「Excedrin Migraine」で、有効成分はアセトアミノフェン(「タイレノール」他)、アスピリン、カフェイン。古くから頭痛緩和に使われる組み合わせで、それぞれの頭文字をとって「AAC処方」と言います。カフェインには脳血管を収縮させる作用があり、脳血管拡張が原因の1つといわれる片頭痛に効くようです。それから、通常の鎮痛剤の箱に「PM」と書かれていたら、それは「夜用」です。鎮痛有効成分に加え、睡眠誘導剤としてどの商品も決まってジフェンヒドラミンが加えられています。これはアレルギー薬「ベナドリル」の有効成分で、抗ヒスタミン剤。眠くなるという副作用を利用しています。乱用しないようにしましょう。
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※基礎疾患がある人は、市販薬であっても服用時に主治医または薬局の薬剤師に相談を。

知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。

樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D. 
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。