連載133 山田順の「週刊:未来地図」 トランプが破壊する世界秩序(5) トンデモ発言を整理すれば対処法がわかる (下)

数々の女性遍歴女性は“欲望の対象”

 トランプはこれまで、数々の女性遍歴を重ねてきたが、女性に対する考えがもっとも現れているのが、選挙戦中に暴露された映像である。これは、2005年の米NBC番組収録前に司会者と交わした会話を録画したもので、言いたい放題言っている。
 「相手がスターなら、女はやらせる。なんだってできる。プッシー(女性器)をまさぐってな」「友人の妻とやるのがいいんだ」などと、欲望丸出しで、女性を欲望の対象としか見ていない。
 トランプの好みは、前記したように、容姿とスタイルがいい女性で、若くて美しいことが第一だ。それに、さほど頭が良くないとなおいいらしい。トランプのスタイルへの執着は異常で、メラニア夫人が妊娠したとき、スタイルが元に戻るなら子供を産んでもいいと言ったと伝えられている。
 トランプの最初の妻イヴァナ・ゼルチコヴァさんは、チェコスロバキア出身のファッションモデル。トランプはイヴァナとの間に、トランプ・ジュニア、イヴァンカ、エリックの3子をもうけたが、浮気が発覚して離婚。トランプはその浮気相手の女優マーラ・メイプルズさんと結婚した。そして1子をもうけてまた離婚、3番目の妻に迎えたのが、スロベニア出身のモデルで現夫人のメラニア・クラウスさんである。彼女との間には、現在、11歳になるバロン君がいる。
 昨年、大統領になると、過去の乱脈な女性関係が次々に暴露され、少なくとも19人の女性との関係がメディアに取り上げられた。
 そのなかの1人、元プレイボーイ誌のモデル、カレン・マクドゥーガルさんは、昨年3月、CNNに出演し、トランプと2006年に不倫関係にあったことを告白した。先週、CNNによって弁護士との間の口止めのための協議会話が公開されたが、その対象が彼女である。関係があった2006年は、トランプがメラニア夫人と結婚してまだ1年ほど、息子のバロン君が生まれて間もなくのころだ。

大嫌いなのは正論を言うエリート

 トランプは、若い男性は嫌いである。とくに、知性があり、正論を言うエリートはお気に召さない。たとえば、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、これまでたびたびトランプを批判してきたので、徹底的に嫌っている。
 海外のリーダーのなかでは、とくにカナダ首相のジャスティン・トルドー氏が、最近、徹底的に嫌われた。G7シャルルボワ・サミット後、トルドー首相を「非常に不正直で弱虫だ」とツイッターで罵倒した。
 これは、トルドー首相がトランプ退場後に、トランプを批判したからだが、どう見てもトルドー首相のほうに理がある。
 トルドー首相は「カナダが(対米貿易黒字によって)アメリカの安全保障の脅威になったというのは、第2次大戦やアフガニスタン戦争でともに戦い、犠牲を出してきた歴史に対する侮辱だ」と、鉄鋼・アルミ関税を非難したのだ。
 そこで、トランプとの貿易戦争で生き残る道を考えてみると、どんどんアメリカ製品を買って、アメリカの貿易赤字を減らすことに協力するほかないということになる。1度言い出したら撤回しないのだから、機嫌をとって従い、ほかのことで利を求めるはめに。中国のようにメンツをかけて報復関税に走ったり、ごねたりしたら逆効果だ。トランプはさらにふっかけてくるからだ。
 これは、トランプがNATO諸国を「GDPの2%をすぐに払え」と脅かしたことでも同じだ。ともかく、カネを出してアメリカ製の兵器を買うことだ。この点、日本の安倍首相は、覚えめでたい行動に出ている。
 例外もある。マクロン仏大統領である。
 マクロン氏は、知性も教養も定見もある青年大統領だが、トランプは嫌っていない。なんとトランプとマクロンはいまや「ブロマンス」(brotherとromanceの混成語、男同士の愛に近い関係を指す)とまで言われている。
 なぜなのか? それはじつに単純な理由で、フランスの対米貿易黒字はほかの国に比べると少なく、国防費の支出もGDPの2%を超えているからだ。
(つづく)

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【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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