性犯罪の司法の扱い「着実に変化」 「#MeToo」運動で被害届けやすく

 2000年代初めに未成年の少女を買春したとして今月初め、マンハッタン区の連邦地検に起訴された富豪のジェフリー・エプスタイン被告(66)。およそ15年前の疑惑について、なぜ今になって罪に問われているのか。ニューヨークタイムズは「#MeToo(私も)」運動の影響で、刑事司法当局の性犯罪被害者への見方が着実に変わってきているためだと指摘する。
 25日付の記事によると、この流れを受けて罪に問われているのはエプスタイン被告だけではない。イリノイ州シカゴ市での児童ポルノ制作、ブルックリン区での女性買春の疑いで今年2月と5月に訴追されたR&B歌手のR・ケリー被告(52)もだ。数十人の女性が長年にわたり、被害を訴えていた。同被告の性犯罪を告発するドキュメンタリー「サバイビング・R・ケリー」では、07年に「#MeToo」運動を始めたタラナ・バークさんなど複数の女性が証言していた。
 同紙は「#MeToo」運動の影響で、被害者が被害を届けやすい環境が整ったと指摘する。女性に性的暴行を加えたとして有罪判決を受け服役中のコメディアン、ビル・コスビー受刑者を18年、有罪に導いたクリステン・ギボンズ・フェデン元検事は同紙に「これまで刑事司法システムが性的暴行の被害者にどれほど偏見があったかを、ほとんどの人は知らない」と述べる。
 フェデン氏が同紙に話したところによると、ここ数年、性犯罪の被害者に接する刑事や警官に対しては、被害者の記憶が曖昧になる場合があることを踏まえ、疑いの目を持たずに事情聴取を行うよう指導が行われた。検事局による性的暴行罪での起訴も増えた。
 判事も変わりつつある。ニュージャージー州では今年、レイプ罪で起訴され、検察側から成人としての扱いを求められていた16歳の被告を「良家の出身」との理由で寛大な措置を与えようとした判事が批判を浴び、辞任に追い込まれた。これを受け同州全体で今後、判事を対象とした性的暴行や家庭内暴力(DV)事件における偏見をなくす指導が実施されるという。
 ただし、同紙は著名人が容疑者となるケースでは「#MeToo」運動が着実に司法制度に変化を及ぼしているものの、一般人の場合は依然ハードルが高いと忠告した。

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