弁護士スティーブン・エプステインの知ってて安心! 法律指南 Vol. 52 ◆延命治療に関係する 「医療判断代理委任状」と「生前遺言書」

 現代の高度な医療技術では延命が可能になっています。しかし、それに伴いさまざまな問題に直面することがあります。私たちは、自分自身の医療措置に対する希望を主張できる権利や権限を有しています。それらについては誰も無視することはできません。
 ニューヨーク州では、「医療判断代理委任状」と「生前遺言書」の2種類の書類を作成することにより、この権限を最も効果的に把握することができる仕組みになっています。

「医療判断代理委任状」とは
 医療判断代理委任状を提出することにより、「ヘルスケア代理人」を選任することができます。医療判断代理委任状は、18歳以上であれば誰でも作成できます。ヘルスケア代理人とは、何らかの理由で、自分自身で医療措置における決断を下すことができない場合、代理でヘルスケアに関する決定を下す人のことを指します。一般的に、ヘルスケア代理人も18歳以上の成人でなければなりません。ヘルスケア代理人は、配偶者やパートナー、成人した子ども、親戚、親しい友人や弁護士などから個人の判断で自由に選べます。
 ニューヨーク州の医療判断委任法の下、患者の判断力が失われたと医者が判断した場合、ヘルスケア代理人は、患者の医療措置の決断を下す権限を持っています。
 延命治療の撤回や保留の決定については、専門医が、かかりつけの医師(プライマリードクター)の判断を仰がなければなりません。ヘルスケア代理人には、あなたが望むことと同様の権利が与えられています。言い換えれば、ヘルスケア代理人は、「患者に代わり、医療に関する全ての決定権を持っている」のです。 医療判断委任状にあなたの意向を示していない限り、委任状の有効期間は基本的に「一生」です。ただし無効期限の設定を希望する場合は、その日付や、無効にする場合の条件やその旨を書き加えることもできます。

治療の意思決定にまつわる
「生前遺言書」
 生前遺言書は、「終末期の希望」を書面にして残すものです。
 生前遺言書の作成は、18歳以上でなければなりません。生前遺言書では、自らの意思を決定することが不可能な状態になった場合を想定して、自らが望む、または望まない治療方法についての指示を具体的に示すことができます。また、自分が末期や昏睡状態で、回復する見込みがない場合、胃ろうや点滴での延命治療を行うかどうかなどの意思も示すことができます。
 生前遺言書は、その内容が「明確かつ説得力のある証拠がある」場合に限り適用となります。生前遺言書には証人2人の署名が必要です。ただし、ヘルスケア代理人の名前を使用することはできません。
 医療判断委任状や生前遺言書の作成を考えている人は、お気軽にお問い合わせください。

Steven W. Epstein スティーブン・エプステイン弁護士
ブランディーズ大学、ニューヨーク・ロースクール卒。18歳から法律事務所で働き始め、2003年まで弁護士組合員として幅広い分野の訴訟を担当。04年に独立し、「Steven W. Epstein & Assosiates法律事務所」を設立した。取扱い業務は、民事訴訟、会社法(設立、契約)、家庭法(離婚)、刑事訴訟など、多岐に渡る。また、NY市行政裁判所にて非常勤審判官も務めている。

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