連載283 山田順の「週刊:未来地図」  ニッポンの貧困、アメリカの貧困(第二部・中)メディアが取り上げない深刻化する日本の貧困

駅から公園、河川敷、そして一時宿泊所へ

 東京では、かつて「ドヤ」と呼ばれた三谷地区があった。ここは、簡易宿泊所が立ち並び、 日雇い労働者が集まる街だった。現在では、もっぱら生活保護受給者を対象とした「福祉宿」の街になっている。当時、路上を賑わしていたホームレスの姿は、いまはない。
 昔は、都内にある駅のどこにもホームレスがいた。1990年代の半ばごろまで、新宿駅西口の地下広場には、ホームレスがたくさん住んでいた。新宿駅から都庁へ向かう通路には、ホームレスの段ボールハウスがズラッと並んでいた。
 しかし、1990年代後半になって、彼らは行政により強制的に排除され、駅から公園や河川敷に移動して住むようになった。新宿中央公園、上野公園、代々木公園、隅田川河川敷、多摩川河川敷などには、ホームレスのブルーテント張り段ボールハウスがあふれた。
 2001年、国は「ホームレス緊急一時宿泊施設」(いわゆるホームレス・シェルター)をつくることを自治体に要請した。その結果、2004年から東京都では「ホームレス地域生活移行支援事業」が始まった。公園などに住むホームレスの住居を確保して、就労を支援することになった。
 こうしてホームレスは、アパートの空き部屋を格安で与えられたりした。その結果、住所ができたので仕事も探しやすくなった。生活保護も申請できるようになり、行政側は生活保護を奮発した。
 国の発表によると、2018年1月時点で、全国300市区町村でホームレスが確認されたが、その数は5000人ほど。もっともホームレスが多かったのは東京都の1242人、次が大阪府の1110人だった。このようにして、たしかにホームレスは減ったのだが、貧困者そのものが減ったわけではない。

ホームレスは本当にいなくなったのか?

 国は法律(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法)で、ホームレスをこう定義している。
「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」
 つまり、どこであろうと屋内にいる者はホームレスではない。となると、映画「東京難民」で描かれたようなネットカフェ難民は、ホームレスではなくなる。
 東京には、ネットカフェ以外にも、漫画喫茶、カプセルホテルなどを転々としている人々がいる。また、日雇いなどの現場労働者の多くは、事業所が用意した簡易宿泊所で寝泊まりしている。この人々は、ワーキングプアの底辺にいる人々で、ひと昔前は、ホームレスとされていた。
 東京都が2018年に調査したところによると、都内だけで約4000人のネットカフェ難民が確認されている。つまり、昔のホームレスは、ネットカフェ難民や生活保護受給者となって、一般の目から見えなくなっただけなのである。
 実際、生活保護受給者は、年々増え続け、いまや記録的な数に達している。

生活保護の支給で自治体の予算が増大

 生活保護受給者数の推移を見ていくと、この日本が年を追って貧しくなっていることがわかる。
 生活保護受給者数は、1995年は約88万2000人(約60万2000世帯)だったが、2009年には約176万3000人(約127万4000世帯)と約2倍となり、2014年には約216万5000人(約161万2000世帯)と、20年間で約2.5倍に増加した。そのため、近年は、役所が申請の受け付けを絞るようになったが、それでも増え続けている。
 現在、国家財政に占める生活保護予算は約3.8兆円だが、4兆円突破は目前。今後、高齢化が進めば、どんどん増えていくと推計されている。
生活保護費は、国が75%、地方自治体が25%の割合で負担する。そのため、自治体のなかには、予算の拠出に悲鳴を上げるところが増えている。生活保護費の拠出額が全国一多いのが大阪市で、その額は3146億3813万円(2017年度)にも上り、市の一般会計予算の約1兆8000億円の6分の1に達している。大阪市より深刻なのが、東京都台東区で、一般会計予算に占める生活保護費の割合は、なんと24.5%(約4分の1)にも達している。
 全国の自治体には、生活保護費がこの10年間で5倍以上にまで膨らんだところがあり、地方都市では、人口が減っているのに、生活保護世帯が増えているところが多い。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。近著に、「円安亡国」(2015)「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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