連載290 山田順の「週刊:未来地図」 ニッポンの貧困、アメリカの貧困(第四部・中) 先進大国アメリカで、なぜホームレスが増え続けるのか?

ロサンゼルスで行ってはいけないエリア

 まだ、ロサンゼルスのホームレスの数がそれほどではなかったころ、私は、メトロでダウンタウンから1駅のウエストレイク/マッカーサーパーク駅近くのホテルに泊まったことがある。このとき、朝、マッカーサーパークに散歩に出て驚いた。

 公園内は多数のホームレスがたむろし、なかには明らかにドラッグのせいで歩くのが覚束ない男までいたからだ。私は、このときまで、そこがそんな場所とは知らなかった。公園内の池には噴水があり、水鳥が遊んでいるというのに、それはかなり衝撃的な光景だった。
 「メトロの駅ができて少しはよくなりましたが、昔は、怖くて近寄れませんでした。なにしろ、ドラッグの売人がそこら中にいましたからね」と、後でホテルの従業員に聞かされた。
 ロサンゼルスのホームレスの溜まり場といえば、スキッドロウが有名だ。ここは、リトルトーキョーのすぐそばの一画だが、ロサンゼルスでもっとも治安が悪い所とされ、「絶対に行ってはいけない」と言われる。
 また、市の南のエリア、地名で言うと、イングルウッド、サウスゲート、コンプトンなどにホームレスは多い。私は世話になった人がいるので、マリブによく行くが、最近ではマリブでもホームレスを見かけるようになった。

全米でホームレスが多い都市ランキング

 全米規模のホームレス支援組織「CoC」(Continuums of Care)は、各都市のホームレス人口を割り出し、行政当局に対策を促している。CoCのデータに基づく、ホームレスの多い都市のランキングは次のようになっている。

1. ニューヨーク市(ニューヨーク州):7万8676人
2. ロサンゼルス市および郡(カリフォルニア州):4万9995人
3. シアトル/キング郡(ワシントン州):1万2112人
4. サンディエゴ市および郡(カリフォルニア州):8576人
5. サンノゼ/サンタクララ市および郡(カリフォルニア州):7254人
6. コロンビア特別区(ワシントンDC):6904人
7. サンフランシスコ市(カリフォルニア州):6857人
8. フェニックス、メサ/マリコパ郡(アリゾナ州):6298人
9. ボストン市(マサチューセッツ州):6188人
10. ラスベガス市/クラーク郡(ネバダ州):6083人

ちなみに、 州単位で見るとホームレスの半数が5つの州に集中している。その5つの州とは、1位がカリフォルニア州(12万9972人)。次いで、ニューヨーク州(9万1897人)、フロリダ州(3万1030人)、テキサス州(2万5310人)、ワシントン州(2万2304人)の順となっている。

非常事態宣言まで出たハワイのホームレス

ハワイは「楽園」といわれる。これは、ホームレスにとっても同じで、いまやハワイは「ホームレスの楽園」となり、その数は日毎に増えている。
 かつて、1990年代、私は毎年夏を家族とハワイで過ごした。当時、ワイキキでホームレスを見かけることはあったが、それはたまにだった。ところが、ここ数年は、カラカウア通りを歩けば、たくさんのホームレスに出会う。また、カピオラニパークに行けば、ホームレスのテントがある。
 ハワイでホームレスが増え出したのは、2010年代になってから。毎年、あまりに増えるので、2015年、ハワイ州は「非常事態宣言」を出して対策に乗り出した。しかし、今日まで、ホームレスは増え続けている。
 なぜなら、アメリカ本土からホームレスが集まってくるからだ。ロサンゼルスでは、市内からホームレスを追い出すため、ホームレスにハワイ行きの片道航空券を与えたといわれている。
 ハワイは南国のため、ホームレスといっても、一般の市民、観光客と見分けがつかない。Tシャツと短パンでビーチにいれば、誰もホームレスとは思わない。しかも、ビーチにはシャワーもあり、ホームレスといってもいつも清潔にしている。スマホを持っているホームレスもいる。
ハワイ州の人口は約140万人。現在、ホームレス人口は8000人とされ、住民比で見ると、全米でも最大の水準に達している。オアフ島のワイアナエには、ハワイで最大規模のホームレスキャンプがあるが、最近、州当局がこのキャンプの取り締まりの強化に乗り出した。すると、ホームレスの支援組織が、キャンプの存続を求めるツアーをしたりして抵抗している。まさに、イタチごっこで、貧困対策の決め手はないという状態だ。
(つづく) 

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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