あれこれNY教育事情 チャータースクールとは?

教育セミナーなどで、ニューヨーク市の学校事情を説明する際に、よく聞かれるのが「チャータースクールとは何ですか?」という質問だ。チャータースクールとは、米国で1900年代から始まった新しい学校の形態で、公立学校と私立学校の中間に位置するような学校である。 今回は日本には存在しないチャータースクールについて紹介する。

チャータースクールは公立学校?

普通の公立学校は、州と地方自治体の管轄の下、地域の敎育委員会が定める教育基本方針および規制に基づいて公的資金(州の助成金、地方自治体の税金)で運営されている。
それに対してチャータースクールは、非営利団体が行政の認可を得て、公的資金の援助を受けつつ、独自の特徴ある教育方針に基づいて生徒を教育する公立学校だ。授業料は無料で、他の公立学校と同様、地域在住の生徒全てに対して入学の道が公平に開かれている(入学試験などによる生徒の選抜は禁止)。

自由と責任

教育行政の束縛から独立して、独自に学校を運営する例として、普通の公立学校では年間の授業日数や授業時間の長さ、夏休みの時期などは全て同じだが、チャータースクールは自由に日程を組むことが可能だ。例えば8月でも授業を行う学校もある。一方で、学校を認可する州や自治体の定める各学年の教育水準を同様に満たすなど、一定の契約事項もある。例えば日本の学力テストに当たる州統一テストは普通の公立学校同様に実施され、その結果、公表も義務付けられている。教育局が定めた教育課程の基本方針から自由でいられるのと同時に、「公教育」としての責任も負う。この点が私立学校と大きく異なる。

保護者や地域のニーズが作る学校

作りたいと思えば、誰でも学校を始めることができる。例えばその地域の保護者や教育者、団体、活動家などが「こんな学校が必要だ」と、新しいタイプの学校を希望したとしよう。まず運営に必要なスタッフや教育者を集め、その学校が必要な理由、設立理念や特徴、教育方針、独自性、その学校がいかにその地域の子どもたちに教育的な貢献をもたらすかの理由、さらに数年後の教育水準達成の目標をまとめて、自治体に申請する。
学校設立の理由は、「現在の公立教育では得られない革新的教育の学校が欲しい」「地域の公立学校の教育レベルが低すぎる」「教師の質が悪く満足できない」あるいは、「子どもを通わせることに危険を感じる」「公立教育のカリキュラムに疑問がある」「サイエンスやアートなどに特化した特徴のあるカリキュラムを作りたい」「人種偏重の環境を打破したい」「特定の教育や研究のための学校を作りたい」などとさまざまだ。共通することは、既に存在する伝統的な公立学校のシステムから離れ、独自の教育活動を展開すること、同時にそれが公共の利益に帰するという目的意識だ。単純に学校の数を増やすこととは一線を画す。
申請が認可されると、公的資金の援助で学校が設立される。普通の公立学校と異なり、学校運営は申請したグループの設立する非営利団体が担う。しかし一定期間中に(ニューヨーク市は5年)設立時の目標が達成されなかったり、運営が失敗したりした場合は、学校は閉鎖される。その他に学校を作ったが生徒が集まらない、または、学習水準の向上の成果が見られないなども理由として挙げられる。

チャータースクールと普通の公立学校の違い

ニューヨーク市での評価

ニューヨーク市では近年、チャータースクールの人気が高まっている。公立学校における社会的、人種的、経済的格差とそれに起因する学力格差を是正するため市は学校の多様化政策を急ピッチで推し進めている。しかしながら、その歩みは遅く、混沌としている。
このような公立校制度に疲弊し不満を抱える家庭が、市の教育政策に頼らない新しい学校教育の可能性をチャータースクールに見出すのもうなずける。
チャータースクールは無料の公立学校だが、その設立理念や特徴は実にさまざまだ。家庭的な雰囲気を標榜する学校から、学業への厳しい姿勢(そして結果を出すこと)で人気の学校もある。チャータースクールを視野に入れる場合はその特徴をよく理解することが重要だ。
ニューヨーク市チャータースクールセンター(New York City Charter School Center www.nyccharterschools.org)では、市内の情報発信や、複数校への申し込みを一括で行える「コモンアプリケーション」を提供している。
チャータースクールが全て加盟しているわけではないため、希望校の情報が見つけられない場合は、学校に直接問い合わせてみよう。
(河原その子/舞台演出家、ライター、学校コンサルタント)

ニューヨーク市のチャーター・スクール・
センターの公式ホームページ