連載303 山田順の「週刊:未来地図」安倍政権はなにをしてきたのだろうか?(第二部・中)  史上最長政権の7年間を振り返る

「地球儀俯瞰外交」で世界中にバラマキ

 安倍首相はこれまで、自身の外交を「地球儀俯瞰外交」と自画自賛してきた。この7年間で、なんと地球を36周した計算になり、訪問した国と地域は170以上に上るという。しかし、その実態となると、単なるカネのバラマキである。
 このことは、大手メディア以外によって、すでに大きく批判されており、ネットメディアでは、「安倍海外バラマキリスト」が出回っている。以下、そのバラマキリストのほんの一部を並べてみたい。

 ▼ミャンマーに、日本への支払いが滞っている債務のうち新たに2000億円を免除し、およそ5000億円の債務を解消するほか、円借款と無償資金協力を合わせて総額910億円のODAを実施
 ▼中東・北アフリカ地域に対し新たに総額22億ドル=2160億円規模の支援を発表
 ▼安倍首相、シリアの女性支援にODA3000億円表明 国連演説
 ▼シリア難民に59億円追加支援、安倍首相が国連演説
 ▼ASEANに5年間で2兆円規模の政府開発援助(ODA)拠出を発表
 ▼「ラオスに円借款90億円」 安倍首相が供与を表明
 ▼インドに5年で3兆5000億円の官民投融資、日本政府が約束
 ▼エジプトに円借款430億円 首相が中東訪問で表明へ
 ▼安倍首相、中東政策スピーチ 安定化に25億ドル(約3000億円)支援表明

 昨年、2018年1月、参院本会議の代表質問で、このバラマキ外交に関して、社民党の福島瑞穂議員が、これまで首相が表明してきた海外支援額を機械的に計算すると合計で約54兆円になる、と外務省から報告を受けたと指摘。「なぜ、海外に大判振る舞いなのか?」と首相を追及した。
 これに対して首相の答えは、「極めて誤解を招く数字だ」「本来の額は2兆8500億円」というものだった。しかし、この数字がどこから出てきたのか、本当によくわからない。また、政府からの詳しい根拠説明もない。
 そから2年が経過しているのに、安倍首相は、いまも海外バラマキ“外遊”を続けている。

スローガン、口先だけでなにもしなかった

 以上、外交面から安倍政権の7年間を見てきたが、ここからは、庶民の記憶に残っているフレーズで振り返ってみよう。
 まずは、なんと言っても「アベノミクス」。
 首相は、当初、「(アベノミクスの恩恵を)全国津々浦々にあまねく届ける」と豪語していた。しかし、どうだろう、この7年間で地方は人口減と産業の空洞化が進み、以前よりさらに疲弊してしまった。
 アベノミクスは「3本の矢」から成っていた。しかし、その恩恵がないと判明すると、次に「新・3本の矢」が打ち出された。前回記事でも書いたが、この「新・3本の矢」を覚えている人はほとんどいないだろう。
 ただし、その目的が「1億総活躍社会」の実現と言えば、「ああそうか」とうなずく人も多い。
 このように、安倍政権は次々と政策目標を打ち出し、スローガンを掲げてきた。次に、私が思い出すものを列記してみる。

「1億総活躍社会」「地方創生」「IR(統合型リゾート)による経済成長」
「女性が輝く社会」「待機児童ゼロ」「幼児教育の無償化」「介護離職ゼロ」
「規制改革」「働き方改革」
「非正規(労働)という言葉をなくす」「介護離職ゼロ」「人生100年」「人
づくり革命」「生産性革命」

 どうだろうか? このなかで、本当に効果があったものはあるだろうか? 私がとくに指摘したいのは、「女性が輝く社会」である。あれほど大キャンペーンをやり、企業の女性管理職を増やす、女性の働きやすさに向けた待機児童対策をやるなどとしてきたのに、日本女性はいまだに社会から排除されている。
 このほど、世界経済フォーラムが今年のジェンダーギャップ(社会における男女間の格差を示す指数)を発表したが、日本の順位は世界でも最低クラスの121位だった。
 政治分野では、さらに低く、144位。はっきり言って、日本は女性がまったく輝いていない国なのである。フィンランドでは、なんと史上最年少34歳の女性首相が誕生している。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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