チャールズ・ダンさん、99歳 隣人から敬愛された歌手

 マンハッタン区アッパーウエストサイドのコープの良き隣人として敬愛された歌手、チャールズ・ダンさんが今月、亡くなった。99歳だった。歌手として有名になることはなかったが、市井に生きた1人の男の人生をニューヨークタイムズが13日、報じた。
 イリノイ州生まれで、6フィート2インチ(約188センチ)と大柄だった。音楽を学んで1942年、同州のミリキン大学を卒業。第二次世界大戦時は沿岸警備隊員として従軍した。除隊後はニューヨークに出て音楽の道に邁進した。「アニーよ銃をとれ」「ミュージックマン」などのミュージカルの他、ニューヨークシティオペラの舞台やコンサートにも出演した。62年にはマリリン・モンローが「ハッピーバースデー・ツー・ミスター・プレジデント」と歌ったマジソン・スクエア・ガーデンでのケネディ大統領の誕生日祝賀会にも参加している。
 50年代中頃、一夏中モーターショーで歌って手にした資金でアッパーウエストサイドのコープを購入。5階の部屋の長患いだった隣人の面倒を見て、その隣人が亡くなると、その部屋を贈与された。その部屋を長らく貸して老後資金を作った。
 十年ほど前、5階の2つの部屋を売り、2階の部屋を借りて亡くなるまで住んだ。部屋からはバスバリトンの声が漏れ聞こえ、住民の心が和んだという。コープの管理組合長ダニエル・シゴさんは「半年前、部屋まで付きそうと、ドイツやフランスの歌曲を歌ってくれた。太く朗々とした声だった」と惜しんだ。