連載313 山田順の「週刊:未来地図」武漢肺炎(新型コロナ)パンデミック (下) 楽観視は禁物。経済、個人生活への影響は計り知れない

これまでと違う中国政府の動き

 アメリカは、どうやら早い段階で今回の新型コロナウイルスの正体を知っていたと思われる。
私は今回、SARSのときと違う中国政府の対応を見て、騒ぎはいずれ収まるだろうと思っていた。歴史的に見ても、ペストやコレラなど大量の死亡者が出ないかぎり、パンデミックにはならないからだ。
 しかも、今回はいくら遅いと批判されても、中国政府の対応はけっこう早くて、大々的だった。武漢市を全面閉鎖するなど、その動きはSARSなどのときと違っていた。また、報道規制やごまかしを繰り返してきた中国政府も今回ばかりはそれを認め、これまで発表してきた感染者数の統計数字には未発症者が含まれていないと発表した。さらに、上海市当局も300人の発症と1人の死亡を隠していたことを認めた。
発生源の武漢市では幹部が更迭され、新型コロナウイルスの発生源として疑われている武漢ウイルス研究所には、中国人民解放軍の少将であり、トップクラスの科学者が送り込まれた。この少将は女性であり、陳薇(チェン・ウェイ)という。
彼女は、SARS とエボラ出血熱のエキスパート。SARSとの戦いでもっとも貢献した学者で、生物化学兵器部門の最高責任者である。
 ここまで中国がやっているのだから、インフルエンザ同様、暖かくなれば終息すると考えるのが自然だろうと思ってきた。

やはりウイルスは人口的なものなのか?

 しかし、こうした中国政府の対応を裏返しに考えると、武漢肺炎の発生源は海鮮市場ではなく、武漢ウイルス研究所であり、新型コロナウイルスは人工的なものというのが真相かもしれない。
新型コロナウイルスの感染力は想像以上に高い。未発症者からも感染する。感染拡大が止まらないところを見ると、自然界にあったものではないかもしれない。
となると、暖かくなったらインフルエンザと同じように終息していくと考えるのは間違っている。実際、南国のシンガポールでも感染拡大が続いている。
いま、武漢ウイルス研究所の石正麗という研究員が、SNSで血祭りに上がっている。それは、彼が昨年、「コウモリからコロナウイルスを抽出し新種のコロナウイルスを研究する」という講演会を行ったことがわかり、SNS上で開発者として名指しされたことに怒りのツイートをしたからだ。
これに対して、現役研究員の1人が、目撃情報も暴露しながら、石正麗を批判している。
 こうしたことを思うと、人工ウイルス説が真実ではないかと思う。いまは、アメリカのオルトメディアだけではなく、マスメディアも人口説を報道している。陰謀論だけで片付けられなくなった。

日本に帰ってもアメリカに戻れない

 ここからは私事だが、現在、私の娘はニューヨーク在住である。今回の武漢肺炎の騒ぎが起こる前から家内は娘を心配して、何度もラインやメールをしている。それは、アメリカでは史上最悪のインフルエンザのアウトブレークが起こっていて、すでに1万人以上の死者が出ているからだ。とくに、ニューヨークは感染拡大がひどい。
これに、武漢肺炎が加わったのだから、在米日本人の不安は募るばかりとなっている。そしていま武漢肺炎は新たなフェーズに入り、このまま日本の感染者が全国的に増え続ければ、アメリカ政府は中国同様、自国民の日本渡航を禁止する可能性が高まっている。そうなれば、日本からの渡航者も入国拒否しかねない。たとえば、過去2週間以内に東京に滞在歴があれば、入国禁止の措置がとられる可能性もある。そうなれば、アメリカ本土はもちろん、ハワイにも行けなくなる。
 アメリカの航空会社も他国の航空会社も、中国便同様、日本便の運行を停止するのは間違いない。現在、ユナイテッド、デルタ、アメリカンは中国に飛んでいない。欧州のルフトハンザ、ブリテッシュ・エアウエイズなども中国便を欠航している。
となると、娘を含め在米日本人は日本に帰ってこられない。また、ほかの方法で帰ってこられたとしても、アメリカに再入国できなくなる。この3月初旬、娘は仕事で日本への一時帰国を予定している。また、私も4月に取材でアメリカ行きを予定している。いったいどうなるか、いまは、固唾を飲んで事態を見守るほかない。

金融緩和はコロナウイルスより強いのか?

 不思議なのは、ここまで事態が進んできたというのに、世界中で株価が高値を維持していることだ。中国は閉鎖状況が続く間は、経済は7、8割もダウンすると試算されている。だから、春節が終わった2月10日、北京は経済活動を再開すると発表した。
しかし、ヒトの動きは依然として制限され、首都・北京では、いったん市外に出ると、市内に戻ったら2週間の検疫を義務付けられている。武漢は見捨てられ、首都防衛に必死ということなのだろう。
 中国株は、政府が金融緩和マネーを投入しているからいいとしても、アメリカも不況に陥っているドイツも高値に張り付いているのは解せない。日本は管制相場だからわかるが、アメリカや欧州はなぜ株高が維持されているのか?
緩和マネーは、コロナウイルスによる経済ダウンより、はるかに強いということなのだろうか?
 ただ、この先、なんらかのきっかけで暴落が一気に起こる可能性もある。投資家は今後の動きを注視すべきだ。株式市場のチャートなどとともに、ジョンズ・ホプキンズ大学の「COVID19の感染状況レポート」(毎日更新)を見ることをお勧めする。
(了)

The Johns Hopkins Center for Health Securitywww.centerforhealthsecurity.org/resources/COVID-19/

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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