飯島真由美 弁護士 Legal Cafe Vol.47 共同親権について

 離婚の際、日本ではどちらかの親が単独で親権を取りますが、最近は日本政府も共同親権を検討していると聞きます。米国では共同親権が一般的ですが、単独親権と共同親権はどう違うのでしょうか?

共同親権 VS 単独親権
 親権には、子育ての方針について決める権利を有するリーガルカスタディー(legal custody)と、子どもと一緒に過ごす権利、フィジカルカスタディー(physical custody)の2つがあります。
 離婚した親に共同のリーガルカスタディーがある場合は、双方が、子どもの教育や医療方針などの決定に同等の権利を有します。一方の親に単独(sole)でリーガルカスタディーが与えられた場合は、その親が子育てに対しての最終決定を下せます。しかし、リーガルカスタディーを持たないからといって子どもと全くかかわれないというわけではありません。子どもの教育や医療方針などに口を出すことは可能です。また、親権を持つ親の判断に反対の場合は、提訴することもできます。
 また、フィジカルカスタディーについては、子どもが親と過ごす時間をきっちり半分ずつにする共同親権のケースもあります(子どもが週の半分、または1週間ごとに移動するなど)。平日は母親と過ごし、父親には週末会うといったケースもまだ多いと思います。この場合は母親にプライマリー・フィジカル・カスタディー(primary physical custody)があり、母親に「親権がある」と見なされ、父親には面会権(Visitation)が付きます。日本では依然として、離婚後に子どもと疎遠になってしまう親が少なくないようですが、米国では通常、離婚後も親と子の交流が続きます。そのため、面会権を持つ親が恋人と同棲を始めたり再婚をしたりして、たとえその相手が気に入らなかったとしても、子どもを面会に行かせなければなりません。子どもに対して悪影響があると判断されない限り、子どもと親の面会を中止することは禁じられています。

遠距離の引っ越し
 上記のように離婚後も親と子の交流は続くため、親権のある親が遠距離の移動を希望すると揉める場合が多いです。「離婚後は日本に子どもを連れて帰りたい」といった相談をときどき受けますが、子どもと親との交流が妨げられ、子ども自身も環境が変わるため、裁判所で争っても認められる可能性は非常に低いです。「日本では家族のサポートがある」「仕事が見つかりやすい」といった理由ではなく、子どもが日本で暮らす特別の利点がないと承認は難しいでしょう。ただし、面会権を持つ親からの同意があれば例外となります。

今月のお店
Sawada Coffee
33 Cortland Alley (bet. Walker & White Sts.)
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http://sawadacoffee.com/new-york
日本人バリスタでラテアーティストの 澤田洋史の店。シカゴに続く米国第2号店。店内は暗いが雰囲気のある 店づくり。抹茶ラテがおすすめ。


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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。