連載366 山田順の「週刊:未来地図」 対策は失敗続きなのにコロナ感染防止は成功: なぜ、日本の“奇跡”は起こったのか?(下)

「検査が少ないので死亡者も少ない」説

 これまで、PCR検査の異常な少なさがすべての原因のように言われてきた、死亡者数が少ないのも、PCR検査数が少ないからで、たとえば、死亡者に対してPCR検査をしていなければカウントされない。実際は、もっといるのではと言われてきた。
「インフルエンザによる肺炎、誤嚥性肺炎などで死亡診断された人のなかに新型コロナの人がたくさん紛れているのでは?」 
 そんな声もよく聞かれた。しかし、「超過死亡」を調べてみると、そんなことは起こっていないので、この説も怪しい。
 「超過死亡」とは、たとえば、インフルエンザが流行した際に、インフルエンザによる肺炎死がどの程度増加したかを示す推定値。死亡者の数を週単位で集計し、それを過去数年の死亡者数と比べて、不自然に死亡者が増加していれば、この増加はインフルエンザの流行によるものと判断する。
 これは新型コロナでも同じで、超過死亡には新型コロナとは直接関連ない死者(新型ウイルス流行に伴う医療崩壊によりほかの病気の治療を受けられなかった人など)も含まれる。
 たとえば、イタリアでは、2月20日〜3月31日の期間の新型コロナウイルスによる死者は1万2428人と発表された。しかし、過去5年間の平均と比較した同期間の「超過死亡」は2万5354人に上っていた。ほかの欧州諸国と比べ新型コロナ対策に成功したとされるドイツでさえ、今年3月の超過死亡数は3706人と、新型コロナウイルスの公式死者数である2218人を上回っていた。これは、ニューヨークも同じで、ニューヨークでは医療崩壊により、少なくとも7000人がコロナ関連死したと推定されている。
 そこで、日本のコロナ死亡者数が本当に少ないのかどうかは、この「超過死亡」を確かめればいいことになる。
 国立感染症研究所では、インフルエンザ関連死亡迅速把握システムを用いた「21都市のインフルエンザ・肺炎死亡報告」を公表している。これを見ると、日本の21都市で、今年の1月〜3月における「超過死亡」はない。感染者がピークをつけた4月の数字はまだ出ていないので、確定的なことは言えないが、日本では欧米諸国のようなことは起こっていないのだ。
 ただし、東京都だけは、2020年8週目以降に超過死亡があり、合計すると130人ほど超過している。これだけである。「ブルームバーグ」通信は、5月14日の記事『東京都内の死亡者数、新型コロナ感染症拡大局面でも急増見られず』で、都内の1〜3月の死亡数は3万3106人と過去4年の同じ時期の平均を0.4%下回ったと報じている。
https://www.bloomberg.co.jp/newsarticles/2020-05-14/QAAL5SDWRGG201

ありえる「日本人は肥満が少ない」説

 ニューヨークなどの死亡例に、肥満者が多かったというのは、すでによく知られている。2009年新型インフルエンザの大流行でも、肥満者は発症と合併症リスクが高かったという。そのせいか、今回の新型コロナでも、同様の調査研究が行われた。それは、たとえば肥満の指数である「ボディマス指数」(BMI:Body Mass Index)が高いほど死亡リスクが高いというもの。
 たとえば、英オックフォード大学の研究チームはNHS(英国民医療サービス)の約1743万人の健康記録を分析、新型コロナウイルス感染が原因で死亡した5683人の「コロナ死の主な要因」を分析した。それによると、BMIが40以上のコロナ死亡率は標準の2.27倍だった。
 ニューヨーク大学でも、市のコロナ患者4103人を調べて、肥満がリスクを増大さていることをオッズ化した。BMI30未満を1とした場合、30〜40で4.26倍、40超で6.2倍にリスクが高まる。
 ちなみに、BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った指数で、WHOでは、25以上を「過体重」30〜34.9を「肥満」、35以上を「高度肥満」としている。ちなみに、日本肥満学会では25以上を「肥満」(メタボ)としている。理想値は男性が22、女性が21である。
 そこで、世界各国の肥満度を見ていくと、日本は、OECD諸国のなかで男女ともにBMIはもっとも低い。次に韓国が低く、もっとも高いのはアメリカの28.8で、続いて英国27.3だ。スペイン、イタリア、フランスも高い。いずれの国も25を超えている。ただ、100万人当たりの死亡率でトップのベルギーは25を超えていない。ちなみに、日本人のBMIは男性平均23.6、女性平均22.5だ。
 となると、この「肥満起因説」は、かなりありえるのではないだろうか。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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