連載385 山田順の「週刊:未来地図」トランプが破壊する世界経済、日本もどん底に!「コロナ禍」はまだ序の口(完)

政府がやるべきことは減税と医療の充実

 トランプ政権も安倍政権も、今後、コロナ対策という名の経済バラマキ政策を続けるだろう。しかし、それを永遠にやり続けることはできない。まして、コロナの感染拡大防止対策をやらず、経済対策ばかりをやれば、状況はさらに悪化する。
 メディアも国民も「景気対策は不十分」として、政府に対して、おカネを求め続けるだろう。しかし、それは、本当に危険だ。ここは、経済縮小を受け入れ、不景気になるなかで、不要産業の新陳代謝をはかり、市場の自律的回復にまかせるほかない。そうなしなければ、大恐慌になる。
 いま政府がやるべきで、国民が政府に求めるべきなのは、ウイズコロナのニューノーマル生活のなかで、経済をこれ以上落ち込ませない政策を実行することだ。
 それは、これまで述べてきたように、事業主や従業員への財政支援ではない。旧来産業への補助金でもない。そんなことをするなら、減税のほうがましだ。消費税を減税する。さらに、公務員給与をさげ、公務員をリストラする。
 また、徹底した検査をやり、感染者を隔離し、人々に安全を保証し、医療を充実させる。これは絶対に必要だ。ともかく、予算を使うべきなのは、検査と医療と新規事業の補助だけだ。

シラー教授の意見は傾聴に値する

 7月7日、CNBCの番組「トレーディング・ネイション」(Trading Nation)で、ノーベル賞受賞の経済学者、ロバート・シラー氏が、傾聴に値する見解を述べていた。
 シラー氏は「もう一度ロックダウンしなければならないかもしれない」と述べ、経済に対してはきわめて悲観的な見方を提示した。「(これからは)最新ファッションを見せびらかしたり、ピカピカの新車に乗ったりしなくていい、これまでとは異なるカルチャーが生まれ、それが何年も続く可能性がある。私たちは力を抜いていいと学んだのだ。しかし、これは経済にとっては悪いことだ」
 ニューノーマル生活で、経済は悪化するというわけだ。
 シラー氏の見方は、きわめて悲観的である。
 株価上昇で景気が上向いたように見えるが、それは財務省とFRBが取った積極的な景気刺激策によるもので、「経済回復につながると自動的に思い込むことは危険だ」と述べた。3月に株価が大暴落したとき、「大恐慌の再来」と言われたが、いまや誰も言わなくなった。このことにも、シラー氏は疑問を呈した。
 大恐慌を招くのは、コロナではなく、今後の政府の政策だ。いまだに、日本では「感染者数も死者も世界より少ない」ことで、政府内には楽観論が蔓延している。国民は、悲観派と楽観派に分断されている。
 しかし、このままの状況が続けば、アメリカ経済の回復は当分ありえず、大恐慌に向かうのは確実だ。日本もその余波をもろに受けるだろう。さらに、中国の大不況の影響も受ける。
 世界は最悪の方向に進んでいる、としか言いようがない。
(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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