連載528 山田順の「週刊:未来地図」マスクなしの日常生活はいつからできるのか? 高齢者優先のワクチン接種への疑問(上)

連載528 山田順の「週刊:未来地図」マスクなしの日常生活はいつからできるのか? 高齢者優先のワクチン接種への疑問(上)

 日本のコロナ対策を見ていると、絶望的な気分になる。感染拡大の第4派が始まったが、対策としてやっていることは1年前とほぼ同じ。すべて後手後手で、その場しのぎだ。

 その一方で世界を見ると、いまや、いつどのように社会を正常化させるかに焦点が移っている。それもこれも、ワクチン接種が進んでいるからだ。この点でも、日本は大幅に遅れている。

 そこで、この世界はいつ元に戻るのか? 私たちがマスクなしの日常生活に戻れるのはいつになるのかを予測し、ワクチン接種の問題点を指摘してみたい。

私が接種できるのは早くて6月か?

 アメリカや英国でワクチン接種が進んでいることを知るにつけ、本当に嫌な気分になる。いったいいつになれば、私たち日本人はワクチンを接種できるのだろうか?

 私は横浜市民なので、横浜市のHPでワクチンの接種予定をチェックする。

 それでわかったことは以下のとおり。

 横浜市では、医療従事者に続き、高齢者向けの接種を3段階に分けて、4月12日の週(つまり今週)(この記事の初出は4月13日)からスタートする。 

(1)高齢者施設で行う「施設接種」
(2)市が設置する特設会場で行う「集団接種」
(3)身近な病院・診療所等で行う「個別接種」
(1)に関しては、介護老人保健施設(老健)と特別養護老人ホーム(特養)などを中心にして、合計39施設(老健=26施設、特養=13施設)で約8400人に接種する。2回目以降の接種は3週間後の予定。 (2)に関しては、5月17日の週に開始。現在、会場、方法を準備中。 (3)に関しては、市内約1070カ所の医療機関(病院=約70、診療所=約1000)で行う。詳細は5月中旬以降にホームページ等で発表。

 というわけで、おそらく私は(3)になると思うので、受けられるとしたら早くて6月、悪くすると8月ぐらいになるかもしれない。いやそれさえも確証が持てない。

 もう言い古されているが、日本のワクチン接種率は世界最遅。現在のところ、認可されているのはファイザーだけだから、入荷状況によっては遅れる可能性が強い。また、アストラゼネカ、モデルナが認可されるのは5月以降とされるので、気長に待つ以外に手はない。

 ただ、不思議なことに、この状況をメディアも国民世論も、あまり問題にしていない。私はかなり怒っているが、周囲の人間たちは私ほど怒っていない。「アストラゼネカのものは副反応が問題になっているし、すぐに打つのはどうか。しばらく様子見でいいのではないか」と言う知人が多いのだ。

 テレビに登場する専門家も「日本は欧米諸国に比べて感染者数が少ないので、急ぐ必要はありません。接種はご本人の意思です。諸外国の状況を見てから、打つか打たないか決めればいいでしょう」などと言っている。

 しかし、世界では劇的なスピードで接種が進んでいる。

独立記念日までに集団免疫を達成

 4月7日から、ニューヨークでは、20台のワクチンバスが走り出した。車内は6分割されていて、1度に6人が接種できる。用意されているワクチンはジョンソン・エンド・ジョンソンのもので、不法移民の飲食店従業員や飲食店配達員を最優先するという。つまり、なにがなんでも、できる限り早く全国民にワクチン接種を終えさせることを、アメリカ政府は目指している。

https://foimg.com/00065/qrqQqH
*NYCのワクチンバス(出典:NYC Mayor’s Office)

 バイデン大統領は、3月末に「今年の独立記念日はいつものように祝えるだろう」と述べ、さらに4月初めにはワクチン接種対象をアメリカ国内の全成人に拡大する期日を、4月19日に前倒しすると発表した。

 この「独立記念日」(7月4日)というのは重要で、ここまでにアメリカは集団免疫を達成しようとしているのだ。全人口の少なくとも5割以上、7割か8割が感染またはワクチンによって擬似感染すれば集団免疫は達成され、そうなれば、コロナ禍は収束する。

 全米ではいま、ものすごいスピードでワクチン接種が進んでいる。NY在住の知人もすでに受けたと言ってきた。ただ、予約が殺到していてなかなか受けられなかったと言う。

 アトランタ在住の知人は、アメフト会場として有名なメルセデスベンツ・スタジアムで接種を受けたという。ここは、毎日、1万人が接種を受けているという。

 アメリカの接種者(少なくとも1回接種した人)は、4月10日時点で1億1000万人を超えた。ちなみに、アメリカの人口は約3億2820万人。

 ワクチン接種が進むにつれ、全米の感染者数、死者数は目に見えて減ってきた。ただし、ニューヨーク、ニュージャージー、ミシガン、フロリダ、ペンシルバニアの5州では逆に上昇している。これは人々が一足先に対策をゆるめ、動き出してしまったためとされる。テキサス、フロリダなど共和党知事の州では、3月の時点で「マスク着用義務」を撤廃してしまった。

 順調に行っているのは、カリフォルニアで、6月15日から完全に経済活動を再開させると、ニューサム知事は発表した。現在、全米では1日に100万人(土日は200万人)ペースで接種が進んでいて、このままいけば、ニューヨークやノースダコタでは6月末を待たずに成人に対する接種が完了するという。

(つづく)

この続きは5月6日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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