あるのか初の女性大統領誕生  ニッキー・ヘイリーはトランプに勝てるのか? (中1)

あるのか初の女性大統領誕生 
ニッキー・ヘイリーはトランプに勝てるのか? (中1)

(この記事の初出は2024年1月17日)

「ミニトランプ」デサンティスの自滅

 ヘイリーは、これまでトランプを完全に敵に回すようなことは言わなかった。機密文書持ち出し事件の際も、トランプに恩赦を考慮してもいいと言った。
 しかし、選挙運動が進むにつれ、反トランプに舵を切った。デサンティスが「ミニトランプ」と言われ、トランプ支持者の反感を買うのをなるべく避けてきたのとは対照的だった。
 ただし、アイオワ・コーカスの直前に行われたCNNの「one-on-one debate」(トランプ不参加のため)では、両者ともお互いに嘘つき呼ばわりしただけで、露骨なトランプ批判は避けた。
 ヘイリーとデサンティスの違いではっきりしていたのは、ウクライナ支援をしないというデサンティスに対して、ヘイリーが支援を明言したことだ。
 ただ、その政策は「バイデンのカーボンコピーだ」とデサンティスに反撃されたが、トランプがいないだけにディベートは全体的に低調に終わった。それでも、私が見た印象では、ヘイリーが明らかに優勢だった。
 デサンティスは、なぜか口下手になってしまい、明確な主張はとしては、トランプができなかった国境の壁をトランプに代わって「必ずつくる」と言ったぐらいだった。

若い世代はトランプよりヘイリー支持

 ヘイリーの躍進で注目すべきは、アイオワ99郡のなかのストリー郡(Story County)とジョンソン郡(Johnson County)で、トランプと僅差になったことだ。ジョンソン郡では、トランプをわずか1票だが上回った。
 ストリー郡:トランプ34%、ヘイリー30%
 ジョンソン郡:トランプ35.5%、ヘイリー35.5%
 ストリー郡の中心都市エイムズ(Ames)は人口約6万6000人で、アイオワ州立大学がある学園都市。同じくジョンソン郡の中心都市アイオワシティは人口約7万5000人でアイオワ大学がある学園都市。
 つまり、若い世代(Z世代、ミレニアル世代)の多くは、トランプよりヘイリーを支持したのである。アメリカは日本以上の学歴社会のため、出口調査では有権者に大学卒か非大学卒かを聞く。
 CNNの出口調査によると、大学卒のトランプ支持率は36%、ヘイリー支持率は30%だった。
 ちなみに、共和党のアイオワ・コーカスの結果が、そのまま共和党の大統領候補者選びに結びつくとは限らない。
 1976年以降9回の共和党のアイオワ・コーカスで、第1位となった後に党の指名を獲得した候補者は、ジェラルド・フォード(1976年)、ボブ・ドール(1996年)、ジョージ・W・ブッシュ(2000年)、トランプ(2020年)の4人だけ。そして、その後に大統領選で勝利したのはブッシュだけである。

両親はインド出身のエリート教育者

 では、ここからは、ニッキー・ヘイリーとは何者なのか?その人物像とキャリアを紹介していきたい。
 まず彼女の経歴を簡単にまとめると、サウスカロライナ州出身で両親はインドからの移民。2004年、サウスカロライナ州の下院議員選挙に共和党から出馬し、決選投票で現職議員を破り当選。その後、下院議員を3期務め、2011年にサウスカロライナ州知事に就任。この時点で38歳であり、全米でもっとも若い州知事となったため、知名度は全国区になった。
 2017年からは、トランプ政権において国連大使を2年間務め、政治家としてのキャリアを積んだ。そうして、2023年2月に大統領選挙に出馬することを表明し、今日にいたっている。
 生い立ちについて詳しく述べると、出生は1972年1月20日、サウスカロライナ州バンバーグ。父親のアジット・ランダハワと母親のラジはインドのパンジャブ州出身のシク教徒で、父親のアジットはパンジャブ農業大学の教授、母親のラジはデリー大学の法学部の卒業生だった。2人ともインドのエリートである。
 2人は、アジットがカナダのUBC(ブリティシュコロンビア大学)の奨学金を得たためカナダに留学し、アジットがUBCでPhDを修得すると、サウスカロライナのVoorhees College(ビアヒーズ大学)の生物学の教授の職を得たためサウスカロナイナに移住した。
 母親のラジは、当地で公立学校の教師となって、ニッキー・ヘイリーを産んだ。

(つづく)

 

この続きは2月14日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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