連載533 山田順の「週刊:未来地図」株価は永遠に上がり続けるのか? いま蘇る「大恐慌」の教訓(中1)

連載533 山田順の「週刊:未来地図」株価は永遠に上がり続けるのか? いま蘇る「大恐慌」の教訓(中1)

「大恐慌」とは、いったいなんだったのか?

 ではまず、「大恐慌」に関しての一般的な解説から、見ていきたい。以下、ネットの歴史サイト「世界史の窓」から引用する。 《1929年10月にアメリカ合衆国の戦期間で始まり、1933年にかけて世界に広がった経済不況(恐慌)のこと。発端はアメリカ合衆国のウォール街にあるニューヨーク株式取引所で1929年10月24日(後に「暗黒の木曜日」といわれる)に株式が大暴落、以後長期にわたり、かつアメリカだけでなく世界中に不況が拡がった。1930年代に入っても景気は回復せず、企業倒産、銀行の閉鎖、経済不況が一挙に深刻になって、1300万人(4人に1人)の失業者がでた。恐慌はおよそ1936年頃まで続いた。またこの恐慌が世界に波及し、ヨーロッパ各国から日本などアジア諸国にも影響を受け、資本主義各国は恐慌からの脱出策を模索する中で対立を深め、第二次世界大戦がもたらされることとなった。》

 以上はごく簡単な歴史的記述だが、これでわかることは、次の2点だ。第1点は、引き金となったのが株価の大暴落であること。第2点は、「大恐慌」(グレート・ディプレッション)と呼ばれる超が付くディプレッションが起こり、それが第二次大戦をもたらしたということだ。

 となると、これは、現在のコロナ禍による大不況とは別物である。不況の規模、経済停滞の状況は大恐慌に匹敵するが、コロナ不況は人為的につくられたものである。ロックダウンによる経済活動の停止がもたらしたのであり、大恐慌のように株価の暴落が原因となったのではない。

 つまり、大恐慌があるとしたら、これから先だ。いつかとは言えないが、株価の暴落をきっかけに資産バブルが弾け、世界中が大不況になる。それが起こりえる。

フーバー大統領に関する「通説」は間違い

 コロナ禍で家にいるため、私は自分でも感心するほど本をよく読むようになった。そのなかで、最近、何冊かまとめて大恐慌に関する本を読み、いままで教えられてきたことが間違っていたと思うことが、何点もあった。

 その最大のものは、当時の大統領ハーバート・フーバーがなにも手を打たなかったため、不況は深刻化し、大恐慌を招いたという「通説」が間違いだということだ。共和党は「小さな政府」を政策としている党というイメージがあるせいか、歴史を見る目が曇る。

 通説では、たとえばフーバーは公共事業に消極的だったとされるが、じつはすばやく行動し、公共事業を拡大し、大規模な財政出動をしている。彼が行なった最大の公共事業が、フーバーの名が付けられた「フーバーダム」である。まさに、フーバーはケインズ主義的な政策を積極的に行ったのである。

 だから、次の大統領選で対抗馬となった民主党候補のフランクリン・ルーズベルトは、フーバー政権を「アメリカ史上もっとも課税と出費の大きな政府」と攻撃した。副大統領候補のジョン・ガーナーも「フーバーは国を社会主義への道に導いている」と非難した。

 しかし、彼らは政権を取ると、フーバー以上の積極財政、公共事業を行った。つまり、こうしたケインズ的な政策が不況を悪化させ、だらだらと長引かせたのである。

(つづく)

この続きは5月13日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com

>>> 最新のニュース一覧はこちら <<<

 

 

 

 

タグ :  ,