連載639 山田順の「週刊:未来地図」 誰が新首相でも日本の将来は変わらない 人口減少社会の恐ろしさ (上)

連載639 山田順の「週刊:未来地図」 誰が新首相でも日本の将来は変わらない 人口減少社会の恐ろしさ (上)

(この記事の初出は9月28日)

 明日、いよいよ自民党の新総裁が決まり、新首相が誕生する。しかし、新首相が誰になろうと、政策を見る限り日本経済の復活はありえない。また、その後の衆議院選で野党が勝って首相が代わったとしても同じだ。
 誰もが日本経済衰退の最大の原因を無視して、大胆な財政出動を続け、財政赤字を限りなく拡大させていくだけだからだ。もう、この日本はかつてのような輝きは取り戻せない。それを前提に、私たちは生きていくほかないと、近頃、私は心底思うようになった。  日本経済衰退の最大の原因は、人口減少が続くことにある。

PB凍結まで言及した異常な財政出動

 今日まで、自民党総裁選候補者たちの経済政策を聞いて、とことんがっかりしてきた。4人が4人とも、財政出動によって日本経済を復活させられると考えているからだ。

 9月23日には、経済財政運営がテーマのオンライン討論会が行われたが、高市早苗氏が「なんとしても下支えする時期だ。相当、大胆な財政出動を考えている」と言うと、ほかの3人もほぼ同じ考えを披露した。

 河野太郎氏はやや違うのでは思ったが、それでも「(需要と供給の差を示す)GDPギャップを埋める財政出動はやらなければ」と追加経済対策に意欲を示したのだ。

 問題なのは、4人とも政策遂行のための財源についてまったくふれなかったことだ。財政出動というのは、簡単に言えばおカネを使うということ。それもこれまで以上に使うということだが、この借金大国のどこにそんなおカネがあるのだろうか。すでに、アメリカや英国では、コロナ禍で行った大幅な財政出動の穴埋めのための増税論議が始まっている。しかし、日本では誰もこのことを言い出さない。

 驚くのは、高市氏が本気で「基礎的財政収支」(プライマリーバランス、PB)の一時凍結を言い出したことだ。これに、野田聖子氏も同調し、少子化対策への投資を理由に「PBを気にせずやらないと手遅れになる」と述べた。

財政危機を無視したバラマキ政策

 財政出動、PB凍結に関しては、野党も同じだ。というか、もっとすごい財政出動を提唱している。

 立憲民主党の枝野幸男代表は、9月7日に政権交代を実現した場合の7項目の政策を打ち出したが、そのメインは財政出動による生活支援金、給付金のバラマキで、とりあえず30兆円規模の追加予算を組むと明言した。

 野党の議員たちの頭の中には、日本の財政が危機に瀕していることなどまったくない。これは与党も同じで、最近は「国の借金は国民の財産。いくら国債を発行してもいい」という、世界のどこの国でも聞かれない理論を言い出す議員までいる。

 現在の日本は、国家予算の4割を国債に頼っている。この借金依存体質は完全に常態化し、国と地方の長期債務残高は今年度末には1200兆円を超える。GDPのなんと2.4倍である。

 立民の枝野代表は、最近になって、年収1000万円以下の世帯の所得税を1年間ゼロにするという考えを示し、「分厚い中間層を取り戻し、明日の不安を小さくすることが大事だ」と訴えた。

 さらに、「儲かっている超大企業や大金持ちに応分の負担をしていただく」とし、大企業や富裕層に対する課税強化を通じて格差是正を図ると述べた。

(つづく)

この続きは10月29日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。


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