連載765  ロシアに対する経済制裁は効かない 世界は分断され、インフレは進み、ドルまで崩壊する (中1)

連載765  ロシアに対する経済制裁は効かない 世界は分断され、インフレは進み、ドルまで崩壊する (中1)

(この記事の初出は4月12日

 

マクドナルド、丸亀製麺はどうなった?

 この前からメデイアは、ロシア国債がデフォルトするなどと騒いでいる。しかし、デフォルトして困るのは国債保有者であってロシアではない。ロシアは借金を踏み倒せるのだから、痛くも痒くもない。
 デフォルトで外貨が乏しくなっても、エネルギーと食料を物々交換でもいいから、ともかく取引してくれる国があれば、それで十分やっていける。
 モスクワではマクドナルドがなくなり、それでロシア人が困っているなどいうセンチメンタルな報道に騙されてはいけない。直営店以外のマックのフランチャイズ店は、いまも店名を変えて営業を続けている。
 なにしろ、設備、ノウハウなどをただで手に入れることができて、万々歳だろう。
 日本の丸亀製麺も同じだ。西側世論に便乗して撤退してみたら、フランチャイズ先に丸ごと乗っ取られてしまった。現在は「マル」という名で営業しているという。
 こういう状況から、当初、「ロシアは経済制裁で追い詰められる」と言っていた専門家たちは、最近は「ロシアは伝統的に制裁に強い国。意外と長く持ちこたえられる」などと、言い出している。

サハリンから撤退できないジレンマ

 日本の経済制裁も、じつは「口先」だけで、まったく実質的ではない。日本ができる最大の制裁は、サハリンの石油・ガス開発事業「サハリン2」からの撤退だが、岸田文雄首相は、3月31日の衆院本会議で「撤退しない」と明言した。
 日本は、「サハリン2」のほか、ロシア北極圏のLNGプロジェクト「アークティックLNG2」の開発にも三井物産などが積極的にかかわってきた。ここからも、撤退しないことをすでに決めている。つまり、ロシアを非難はするものの、それは口先だけにすぎないのだ。
 もし、ロシア産LNGを失えば、日本の電気料金は暴騰する。中東のLNGはいまや争奪戦となり、ばか高くなっている。
 日本は、地球温暖化対策のためのエネルギー転換に大きく乗り遅れたうえ、政治的に原発停止に舵を切ってしまった。そのツケが、いま、大きくのしかかっていると言える。
 これに追い打ちをかけるのが記録的な「円安」だ。エネルギーも食料も輸入しなければ、日本はやっていけない。私たちの暮らしは成り立たない。

安全地帯から「口先」で非難するだけ

 というわけで、どう見てもロシア帝国は崩壊せず、今後もずっと、欧米中心の西側と対立し続けることになるだろう。これは、ほぼ間違いのない未来図だ。
 現在、ロシア軍が南方、東方への攻勢を強め、マリウポリで10万人以上の市民が取り残され、連日、命を失っている。しかし、アメリカもEUも「口先」だけで、力ではロシアを阻止しようとしない。
 やはりいちばんひどいのは、ウクライナをロシア側から引き離し、NATO加盟を認めるように工作したアメリカだろう。バイデン大統領は、安全地帯のポーランドに行き、派遣米軍を労い、難民を視察しただけで、停戦協議の仲介に動こうともしない。
 ウクライナに武器を小出しに与え、援助はするが、ロシアに対しては「戦争犯罪の責任を追及する」と、叫んでいるだけだ。これが、世界に責任を持つ覇権国家、民主国家のリーダーがすることだろうか?


(つづく)

 

この続きは5月11日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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