連載833  女が逃げ出し男が余る 「超独身社会」が地方から日本を崩壊させる (上)

連載833  女が逃げ出し男が余る
「超独身社会」が地方から日本を崩壊させる (上)

(この記事の初出は7月5日)

 

コロナ禍が東京の転入超過減少に拍車

 コロナ禍になって2年半が過ぎ、東京の人口動態に大きな変化が見られるようになった。まず、テレワークなどが進んだため、これまでのような人口流入に歯止めがかかったことだ。転入が転出を上回る「転入超過」は、2021年、これまででもっとも差が縮小した。
 この傾向が今年も続くとしたら、東京は初めて人口減に見舞われるかもしれない。
 総務省の「人口移動報告」にると、2021年の1年間は、転入者が転出者を5433人上回った。しかし、この5433人という数は、現在の方法で統計を取り始めた2014年以降、もっとも少ない人数なのである。
 人口減にもかかわらず、これまで東京の人口は増え続け、東京一極集中が続いてきた。しかし、その傾向に陰りが出始め、コロナ禍がそれに拍車をかけた。それが、転入超過数の減少である。
 しかし、その中身を見ると、驚くべき現象が見られる。それは、転入・転出者に男女差があることだ。男性より、女性のほうが多く転入しているのだ。


なぜ若い女性は東京を目指すのか?

 2021年の東京への転入者は、男性が22万2220人、女性が19万7947人。いっぽう、転出者は、男性が22万3564人で、女性は19万1170人である。これを男女別に「転入-転出」で見ると、男性は1344人の転出超過になっているのに対し、女性のほうは6777人の転入超過になっている。
 つまり、男性は出ていくほうが多く、女性は入ってくるほうが多いのだ。その結果、全体での転入超過は、男性ではなく女性が大きな要因となっている。
 じつは、女性の東京への流入は、1996年に転出超過から転入超過に変わり、その後ずっと続いてきている、大きなトレンドである。
 そこで、東京に転入してくる女性の年齢層を見ると、20代が52.8%で全体の半数以上を占めている。続いて、30代が18.8%となっていて、なんと20代と30代でじつに70%以上を占めている。
 地方の若い女性の多くが、東京を目指す。いったい、なぜこんなことが、今日までずっと続いてきたのか?
 それは、女性の高学歴化が大きく影響している。女性の大学進学率が上がるともに、女性も卒業後に就職してキャリア形成をするのが当たり前の時代になったためだ。しかし、地方には、そういった女性が自己実現できる労働市場がほとんどない。

 

東京の女性の5人に1人は生涯未婚

 東京に転入する若い女性が増加していることと、「生涯未婚率」はリンクしていている。これは、2020年の国勢調査を見ると、はっきりする。
 東京の未婚率が高いことは、昔からよく言われてきた。一般的に地方より都会、都市圏のほうが未婚率は高く、東京はとくに高かった。
 2020年の国勢調査によると、全国の生涯未婚率は男性25.7%、女性16.4%だったが、東京に限ると男性26.4%、女性20.1%。なんと、東京の女性の未婚率は、とうとう20%の大台を超えてしまったのである。現在、東京の女性の5人に1人は未婚となっているのだ。
 「生涯未婚率」というのは、50歳までに1度も結婚していない人の割合を表す指数。もちろん、50歳を超えてから結婚する人もいるが、未婚人口の0.1%と非常に少ない。そのため、50歳の時点で結婚していないなら一生独身とみなしている。ところが、最近は「人生100年」と言われるようになったせいか、「生涯未婚率」という言い方にクレームが入り、「50歳時未婚率」に変わった。
 しかし、言い方を変えようと、現実は変わらない。
 その現実とは、日本人男性の4人に1人、女性の6人に1人が一生独身になるということだ。生き方が多様化し、同棲、事実婚が増え、法的に結婚することが当たり前の社会ではなくなったとはいえ、この未婚率の高さは異常ではないだろうか?
(つづく)

この続きは8月17日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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