専門家インタビュー「法律編」

専門家インタビュー「法律編」

 

新学期のスタートとともに、新しい生活を始める人も多い秋。コロナ下の海外生活は、いつも以上に不安や心配がともなうものです。ポストコロナ、ウィズコロナの声が聞こえるニューヨークで、安心した生活を送ることができるよう、気になる「医療」「教育」「法律」の情報をお伝えします。

グレイ法律事務所

日本人の訴訟に対する見解を理解しています

 

Josh M. Blane Attorney
ジョシュ・M・ブレイン先生

ニューヨーク州、ニュージャージー州登録弁護士。刑事裁判所の法務書記官を務め、グレイ法律事務所に入所。人身傷害、刑事弁護、公民権訴訟を手掛ける。法律記事のライターとしても認められており、Rutgers Law Recordの編集者を務めるほか、学術書「Drowning in Data: How the Federal Rules Are Staying Afloat in a Flood of Information」も執筆。

 

Q. どのような案件を扱っていますか?

 当法律事務所は、1996年にマーク・グレイがマンハッタン・アッパーウエスト地区に設立して以来、ニューヨーク、ニュージャージーを中心に、25年以上にわたり人身傷害の弁護活動を行っています。日本人スタッフ、グレイの長年にわたる日本との関わりや多数の日本人顧客、彼の配偶者が日本人であることから、私たちは日本人の訴訟に対する考え方を理解しています。顧客から顧客への紹介を通じて、これまで100件以上の日本人が関わる案件を取り扱ってきました。

 

Q. どんな場合に「人身傷害」はおこりますか?

 代表的な例は交通事故です。ニューヨークやニュージャージーの交通事情は日本とは大きく異なり、交通規則を守らない自動車やオートバイなどが多いです。歩行中に信号を守っていても、自動車だけでなく自転車や宅配の電動バイクなどにも注意を払う必要があります。また、ニュージャージーのルート4や17などの日本人コミュニティを結ぶ道路沿いは、店舗が軒を連ねて賑わっており、合流車線も短いため事故が多発しています。交通事故以外では、危険な階段や整備の悪い歩道での転倒、医療訴訟、悪徳行為なども人身傷害扱いとなります。その他の例では、ニュージャージーで日本人女性が誘拐された事件がありました。幸い、女性は3時間後にけがもなく無事に解放されたものの、危険な目に遭ったことによる精神的なトラウマが残りました。女性が住んでいたアパートが必要な安全措置を講じていなかったことが誘拐につながったとして、アパート側が130万ドルを支払い示談が成立しました。

 

Q. コロナ下で増えた訴訟や相談はありますか?

 人々の在宅時間が長くなり、天井の崩壊、階段の設計不良、滑落事故などに起因する家庭内事故が増加しました。屋外ダイニングに車が衝突して負傷された方や、飲食店のコロナ対策に不満を持った客に襲われた従業員の方の案件なども扱いました。

 

Q. 訴訟や示談はどんなプロセスで進みますか?

 まずは被害に遭われた顧客へのコンサルテーションから始まります。交通事故の場合、事故状況および適応する保険内容を時間をかけて確認します。その後は主に弁護士と保険会社とのやり取りとなります。75%程度は訴訟を起こさずに示談で解決しています。90%以上の案件は裁判をすることなく和解します。保険会社にとっては早期解決より保険金の支払い期間を延ばした方が望ましいため、1年で終わるものもあれば、5年かかるものもあります。基本的には3年以内に解決するケースが多いです。

 

Q. 依頼時に費用はかかりますか?

 当法律事務所は、係争に勝たなければ弁護士費用は一切かかりません。初回の相談やケース判断はすべて無料です。そして25年以上の実績の中で、あらゆる分野の専門医、セラピストやカイロプラクターなどとのネットワークがあります。治療はもちろん、重要な証拠や法的権利を確保するため、被害に遭われた際は早く弁護士を立てる事が重要だと確信しています。

 

グレイ法律事務所
251 W. 93rd St, New York, NY 10025
Tel 646-860-5543(日本語)
https://www.grayinjurylaw.com/


飯島真由美弁護士事務所

コロナ下で、自分の最期を考えたい方や詐欺の相談が増えました

 

飯島真由美先生

ニューヨーク州認定弁護士。法政大学文学部、ニューヨーク市立大学法科大学院卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。

 

Q. どのような事案をあつかっていますか?

 主に離婚訴訟などの家庭法や相続関係です。相続関係では遺言書なども作りますが、特に依頼が多いのが、ニューヨークで身寄りなく亡くなった方のその後の手続きです。独身の方、すでに配偶者が亡くなっていてお子さんがいない方、親族や親御さんがすでに他界されている方などが亡くなった際に、裁判所の承認を得た後に財産や遺産を見つけたり、口座解約や家を売却したりする手続きをしています。

 

Q. ニューヨークと日本で相続の違いはありますか?

 私はニューヨーク州の弁護士なので日本の法律については語れないのですが、似た所も多いと思います。ただし、ニューヨークだとお子さんがいない場合は配偶者に全てが相続されますが、日本では親御さんがいれば親御さんにも権利があります。遺言書については、ニューヨークではお子さんに対しては遺留分がないのでお子さんは除外もできますが、日本だとお子さんにも最低限の相続の権利があります。またニューヨークでは、基本的に裁判所を通す必要があります。例えば亡くなった方の銀行口座を解約するにしても、配偶者でも裁判所で承認を得て遺産管財人にならないと手続きができません。日本はそこまで裁判所の介入は必要ないはずです。こういったプロセスが違いますね。

 

Q. コロナ下で増えた訴訟や法律相談はありますか?

 遺言書を作りたい、自分の最期を考えたいという方が増えましたね。また、それほどたくさんではないですけど、詐欺の相談が増えました。投資詐欺やいわゆる国際ロマンス詐欺みたいな。被害者は40〜50代の男女が多い。日本からも何件か相談がありました。

 

Q. どんな手口で詐欺を?

 ロマンス詐欺は多くがSNSから始まります。たとえば、急に友達申請が来たり、フォローバックするとメッセージが来たりといった具合です。女性に対しては、アメリカ人の軍人や弁護士、技術者と名乗っていた例が多いです。メッセージを重ねるうちに恋心を抱かせて、お金の話をしてきます。

 

Q. どんなふうにお金を要求してくるんですか?

 石油の採掘の機械が税関で止まってそれにお金を送らなきゃいけない、国際金融基金がお金を払えと言っている、病気になったなどといった例がありました。その頃には恋心が芽生えているので、被害者は信じて支払ってしまう。

 

Q. ロマンス詐欺に合わない対策法はありますか?

 まずはSNSで知らない人は承認しない。お金の話が出てきたらおかしいのでブロックする。詐欺のために作ったアカウントは写真ばかり載せているなど中身がないものが多いです。

 

Q. 弁護士としての今後の目標はなんですか?

 家庭法だけでなく、ビジネス関係や一般の訴訟にも関わってきたいと思っています。またニューヨークには日本から一人で来られていて独身の方や、配偶者がいても亡くなっている方も多く、今後ニューヨークに住むのであれば最期をどうしようか考えている方も多いので、遺言書の作成や終活などのご相談は引き続き承っていきたいです。

 

飯島真由美弁護士事務所
205 Hudson St, 7th Fl, New York, NY 10013
Tel 212-598-4125
https://ja.iinylaw.com/

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