専門家インタビュー「医療編」

専門家インタビュー「医療編」

 

新学期のスタートとともに、新しい生活を始める人も多い秋。コロナ下の海外生活は、いつも以上に不安や心配がともなうものです。ポストコロナ、ウィズコロナの声が聞こえるニューヨークで、安心した生活を送ることができるよう、気になる「医療」「教育」「法律」の情報をお伝えします。

ひばりファミリーメディカル

元気なときも病気のときも、 患者様をよく知るかかりつけ医へ

 

桑間 千佳先生

東京大学医学部卒業。東京大学附属病院旧第一内科、第三内科で研修。その後旧社会保険中央病院(現東京山手メディカルセンター)に勤務。3年半ニューヨークに滞在後、東京海上ビル診療所(新宿・丸の内)に勤務。その後ニューヨークに戻り、マウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院家庭医療研修プログラムを修了し、米国家庭医学会専門医資格を取得。以来17年にわたり、ニュージャージーのEdgewater Family Care Centerで家庭医として診療に携わる。2020年9月、ひばりファミリーメディカルの院長に就任。

 

Q. アメリカのかかりつけ医について教えてください。

 アメリカでは生まれた時からかかりつけ医を持ち、正常な発達を診てもらい予防接種を受けます。乳幼児期を過ぎても保険を使って年1回検診を受けるので、大人になってからも、特に症状がなくてもかか りつけ医で検診をし、具合が悪くなった時には普段から自身をよく知る医師に診てもらう、という考え方が一般的です。かかりつけ医は窓口なので、診察で専門医にかかった方が適切と判断した場合は専門医 をご紹介します。日本では受診する科を患者自身が考えることが多いですが、アメリカではまずかかりつけ医を受診します。保険によっては、かかりつけ医が紹介状を書かないと専門医を受診できないこともあります。気軽に相談していただくためのかかりつけ医です。

 

Q. どういう基準でかかりつけ医を探したらいいですか?

 アメリカの健康保険をお持ちの方は、そのネットワーク内から医師を選びます。その上で「近いこと」は大事です。特にお子さんは家から近くて通いやすい方がいいでしょう。言葉の壁があり、日本語が通じる医療機関が近くにない方はビデオ診療を活用しましょう。ただし原則としては、元気なときも病気のときも、同じ医師を受診することが最も望ましいです。

 

Q. コロナの前後で変化はありましたか?

 様々な変化がありました。2020年春は緊急時や予防接種が必要なお子さん以外、来院はお断りし、極力ビデオ診療を行いました。熱や風邪の症状があるお子さんはクリニックに入れないため、駐車場の車内で診察しました。2021年春頃から再び人が交わるようになって、一旦は影をひそめた従来のウィルスが戻ってきました。最近は風邪の症状の方は駐車場での検査でコロナの陰性を確認してから、クリニック内で診察しています。また、待合室が混み合わない様、対面とビデオ診療の予約を交互に入れ工夫しています。コロナを機にビデオ診療が普及し、仕事で通院の時間が取りにくい方、遠方にお住いの方、ご家庭の事情で自宅を離れられない方はアクセスが良くなりました。もちろん、対面でお話ができ、直接診察してもらうことはとても大切です。現在はどこの医療機関も感染対策をしています。医療機関のスタッフは皆マスクをしていますし、当院ではマスクをお持ちでない患者様にはマスクをお渡ししています。

ひばりファミリーメディカル
725 River Rd, Suite 214
Edgewater, NJ 07020
Tel 201-581-8553
https://hibarifamilymedical.com/


海外邦人歯科クリニック

歯の正しい手入れと知識を伝えたい

 

Dr.RobertLim
ロバート・リム先生

マサチューセッツ州ボストン市のタフツ大学歯科学部にて歯科医師の学位を取得後、ニュージャージー州のラトガース大学にて小児歯科専門課程を修了。アメリカ小児歯科専門認定医。ニューヨークのクイーンズ区に生まれ育ち、小児内科医だった母親の影響から、幼少期から歯科学に興味を持つ。海外邦人歯科クリニックでの勤務は20年以上。勉強熱心で常に新しい知識や技術を学び、治療に取り入れている。日本語の勉強もしており、カラオケでは日本の歌が十八番、父親が日本の東京育ちという縁もある。現在は妻と二人の娘とウエストチェスターに住む。

 

Q. 貴院の特徴を教えてください。

 当院は、ウエストチェスターとマンハッタンにオフィスを構えています。ご家族で通われる患者様も多く、例えばお父様は平日マンハッタン院に通われ週末ウエストチェスター院に、お母様とお子様は主にウエストチェスター院に通われるなど、生活スタイルに合わせて使い分けられます。歯科医は小児歯科の私のほか補綴、矯正歯科、歯周病、神経治療の専門医がおり、日々アップデートされる新しい技術や知識を吸収し治療に取り入れています。私も日本語を勉強していますが、診療の際は必ず日本語が話せるスタッフが助手につき、チームで力を合わせ治療を行なっています。歯科医も歯科助手も20年程勤務している者ばかりなので私たちも以前来てくださっていた患者様を覚えていますし、患者様も覚えていて戻ってきてくださる方が多いです。駐在員の方の中には、一度日本に戻られ、また転勤でニューヨークへ来られるケースもありますが、かつては小さかったお子さんがティーンエイジャーになって戻ってこられるなど、感慨深いです(笑)。信頼しているからこそ戻って来てくださるのだと思うので、嬉しいですね。

 

Q. 貴院では予防歯科に力を入れられているそうですね。

 はい。虫歯予防は大切です。かつてはアメリカでも日本でも「虫歯になるまで歯医者に行かなくていい」と言われていましたが、虫歯になってからでは遅いのです。歯の問題が出る前から検診を受け、正しい方法で歯磨きをし、指しゃぶりのような悪習慣がお子さんの歯に与える影響を親御さんが知っていることが大事です。例えば、指しゃぶりは歯並びや噛み合わせの問題を引き起こしますが、早い段階でやめさせてあげると、次の検診では正しい位置に戻っているという例もたくさんあります。そういった知識を知っていただくために、歯科医のネットワークだけでなく他の医師会とも連携しながら、日系コミュニティのイベントやセミナー等でのレクチャーを積極的に行なっています。

 

Q. コロナの前後で変化はありましたか?

 コロナ以降はオンラインでセミナーをしていますが、対面でのレクチャーはまだできていません。正しい歯磨きの仕方を模型を使って説明する、歯の詰め物を光で固める体験をする、型を取る方法をクイズ形式で質問する、といった対面のイベントでは子どもたちが楽しみながら知識を吸収してくれるので、来年こそは対面のセミナーを復活させたいです。

海外邦人歯科クリニック
■マンハッタンオフィス
20 E. 46th St, Suite 601
New York, NY 10017
Tel 212-751-5648
■ハリソンオフィス
47 Halstead Ave, Suite 101
Harrison, NY 10528
Tel 914-698-3800
https://ojfd.com/


Global Fertility and Genetics

ストレスフリーな環境を第一に、 患者様に寄り添う

 

Melvin H. Thornton M.D.
メルビン・ソートン先生

生殖内分泌学/不妊症と産婦人科のダブルボード認定医。ワシントン大学医学部卒。南カリフォルニア大学で産婦人科のインターンシップと研修を修了後、クリーブランドクリニックで高度な生殖手術の研修を受ける。コロンビア大学の女性生殖医療センターで医療ディレクターおよび卵子提供プログラムのディレクターを兼任。卵子提供と代理出産分野の世界有数の専門家。

不妊治療コーディネーター
岡本朋子さん

自らも不妊治療を経験し、出産した経験を活かし、不妊治療コーディネーターとして患者さんの心に寄り添ったサービスを提供している。また、日本人患者のカウンセリング時の通訳も担当。国際的な代理出産や卵子提供についても、最初から最後まで一貫したサービスを提供する。日本語と英語に堪能。甲南大学卒業、ニューヨーク州立大学フレドニア校卒業。

 

Q. アメリカの不妊治療について教えてください。

ソートン先生:日本に比べ、アメリカの不妊治療は合理的で成功率が高いです。年齢や検査結果によっては初めから体外受精(IVF)や顕微授精(ISCI)を行ないますし、「一人ひとりに合った排卵誘発を行い、より多くの卵子を採取し、より多くの質の高い受精卵を作る」を基本の治療方針とし、「早い段階で効果の高い治療を試すことが結果的にお金と時間の節約」という効率重視の考え方です。

 

Q. どのような患者様がいらっしゃいますか?

ソートン先生:日本人の方の場合、コーディネーターのトモコの存在が大きいでしょう。彼女は通訳として検査結果や治療ステップ、複雑な保険などを説明するだけでなく、治療のパートナーとして寄り添っています。不妊治療で大事なのはストレスフリーな環境で治療に向き合うことですが、トモコの存在が患者様のストレスを軽減し、結果として妊娠を叶えることに繋がっていると思います。

岡本さん:私自身、不妊治療で子どもを授かった経験があり、第一子のときは有名な大学病院で治療を受け、第二子を望み治療を再開する時に当院に出会いました。そんな私の治療体験がコーディネーターとして役立っていると思います。GFGの魅力は毎回同じ担当医が診察・施術を行う安心感、待ち時間が少なく、採卵や移植がクリニック内で完結する、複雑な保険の手続きを一任できるなど、徹底して患者様の負担を減らす工夫をしている点です。大学病院と比べ規模こそ小さいですが、担当医や看護師、コーディネーターとのコミュニケーションがスムーズかつフレンドリーで、その点が日本人の方が安心して通える魅力だと思います。

 

Q. コロナの前後で不妊治療の現場に変化はありましたか?

岡本さん:行動制限のため、遠方に住む卵子提供者や代理母のニューヨーク渡航が難しい、海外にある冷結精子・卵子・受精卵の郵送が難しい、海外の患者様の渡航が制限される、といったことが起きました。一つずつクリアしましたが、コロナ感染の不安もある中、求める治療がタイムリーに受けられないと、患者様にとって精神的に苦痛です。私たちができることは少しでも感染リスクを減らし、患者様のストレスを軽減しながら治療を続けることです。コロナ前から完全予約制でしたが、患者様同士が一緒になる機会を最小限に抑え、マスクの常時着用、手洗い・消毒の徹底などは直ちに行いました。ワクチン接種の推奨や証明書の提示、PCR検査については先生から患者様に丁寧にご説明し、ご協力いただきました。感染防止には細心の注意を払いましたし、現在も取り組みは続けています。

Global Fertility and Genetics
115 E.57th St, Suite 420-430
New York, NY 10022
Tel 917-940-2703
https://globalfertility.net/

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