【タックスリターン特集】専門家インタビュー 尾崎真由美 米国会計士

 

米国内で収入を得たら、税金の申告は義務です。雇用主が年末調整という形で税を納める日本と 異なり、米国でタックスリターン(確定申告)は個人の責任になるため、早めに手続きを済ませるこ とをお勧めします。タックスリターンの基本情報を専門家の方に伺いました。

「世界中どこにいたとしても、確定申告の義務はあります」

事例ごとの確定申告

Q. 留学生・OPTで収入が少ない場合も申告は必要ですか。
 仮に短期間や少額であっても、雇用形態がアルバイト(パート)であっても、収入がある限りは、申告をしておきましょう。授業料も控除対象となる場合がありますし、少額であっても還付金があるため、申告した方が得策といえます。

Q. Fビザは申告が必要ですか。
 F-1ビザとは、いわゆる学生ビザで、学業を行うためのビザなのですが、定められた限度内でなら就業も可能です。主な就業パターンとして、収入がないととても貧困であると認められたケース、学校キャンパス内のバイト、OPTトレーニング、認可されたインターナショナル雇用主などがあります。収入がある場合は、学生でも例外なくアメリカの確定申告をする必要があります。

Q. Jビザは申告が必要ですか。
 J-1ビザの場合は、W-2フォームの代わりに1042-Sという、すでに免税であるという収入証明をもらう場合が多く、もしもお給料からアメリカ所得税が源泉徴収されて、W-2というフォームをもらう場合は確定申告をして、税金の還付金を申請します。また、非居住者納税者の間は、ソーシャルセキュリティタックスを支払う必要はありません。
 なお、アメリカに183日以上滞在する場合、税務上居住者として納税義務が発生し、アメリカ国外で収入があった場合も、全世界の収入を報告する必要があります。しかしJビザは特殊で、この183日の規定を免除できます。正確には183日という日数が変わります。Jビザの方は、1年間免税となります。しかし税務署はこの人がJだから免税とか、そういう個人の状況はわかりません。唯一1040NRだけが、その個人の状況を税務署へ報告できる手段で「、日本から収入があったけれど、これはJビザなので免税です」ということを報告します。

 1040NRというのは、アメリカで収入があった場合のみ税金を申告して支払う書類です。アメリカ国外で収入があったものは、税金の対象にはならない書類です。税法上、非居住者の人だけが使用します。夫婦合算ができませんので、奥様とご主人様と両方に収入があった場合は、夫婦別々で申告をします。

Q. 日本へ帰国する、また米国外にいる場合も申告は必要ですか。
 確定申告は、たとえ日本へ帰国してしまったとしても、義務付けられています。日本からでもタックス・リターンの申告は可能ですので、きちんと手続きしておきましょう。
 世界中どこにいたとしても、確定申告の義務はあります。郵送による申請も可能ですが、Eファイリングなら、インターネットで行えるので、世界中どこからでも申請が可能です。会計士(CPA)に依頼される場合でも、通常はどの会計事務所でも、海外からの申告にも受付・対応してくれます。弊社でももちろん対応をさせて頂いております。


節税のポイント

Q. 節税できるポイントを教えてください。
 大きく2種類あり、課税対象となる収入額を減らすTax Deductionと、支払う税金そのものを減額するTax Creditがあります。
 Tax Deductionは総収入から経費などを引くことで、実質的な収入額を減らし、収入額により計算される所得税額を減額する試みです。対してTax Creditは、課された税金そのものを減額できるので、Tax Deductionと併用が可能です。


Q. TAXD EDUCTIONについて
 ほとんどの会社員の方は、誰でも一律に認められる控除のStandard Deductionを適用されるのが一般的です。ただし持ち家をお持ちの方や、例えばニューヨーク州にお住まいの方は、州税が高いのでItemized Deduction(項目ごとに計算する控除)を適用される方が、節税の観点から有利に働くかもしれません。病院に行った交通費、チャリティー活動費などの諸経費も、くまなく把握しておきましょう。

Q. TAX CREDITについて
 沢山のTax Creditの種類がございますので、皆様驚かれる方もいらっしゃいます。一例としてForeign Tax Credit(米国外で収入がある場合その所得税を控除)、Lifetime Learning Credit(高等教育の学費を最大2000ドルまで控除)などがございます。

Q. 控除にはどんなものがありますか。
 「転職した」「、結婚した」「、子供ができた」なども確定申告に影響を及ぼす場合がありますので、1年の生活や状況を振り返り、いろいろ見直してみましょう。
 お子様がいらっしゃる場合はChild TaxCreditというTax Creditがございます。子供のデイケア代も控除対象になります。ですからデイケアの方のタックス番号を貰っておきましょう。低所得者の方にはクレジットがあります。またアメリカの軍部にお勤めの方にも、クレジットがある場合もございます。
 レストラン経営で、従業員のチップからメディケアやソーシャル・セキュリティを支払った場合には、クレジットをもらえます。
 日本居住のグリーンカード保持者は、日本での収入については、一定金額まで免税対象となります。日本で支払った税金が、アメリカの確定申告でも控除対象になる場合があります。また日米間におけるソーシャルセキュリティ(年金)の二重支払いを避けるための、日米租税条約も理解しておきましょう。

尾崎 真由美 米国会計士

ワシントン州会計士、東洋大学法学修士、経営学修士。尾崎真由美会計事務所代表。アメリカ全域および日本に、会計・税務サービス、経理代行、確定申告、各種コンサルティング、会社設立などを行なっている。個人の節税や法人の設立など、身近な節税から、知らなくては罰金がかかるかもしれない致命的なケースまで数多く対応。水泳が趣味で週に3回1マイル泳いでいる。コロナ禍を経て、健康についてより考えるようになった。

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