教育インタビュー KUMON North America【後編】

 

KUMON North America
副社長 Chief Support Officer 小玉 大輔さん【後編】

 

 

生徒を伸ばす力の根源は指導者であり、40年後も変わらない

 

KUMON North America
副社長 Chief Support Officer
小玉 大輔 さん

1996年公文教育研究会(以下、“公文”)入社。大阪本社にて人事部、教材制作部の業務経験を経て、2018年3月より現職。副社長として本社部門のマネジメント・人材育成に携わるとともに、公文式数学教材制作の経験を活かし、公文式教室指導者向けのセミナー等も実施。

 

前編「達成経験を持たせることで自信と意欲を育んでいく」

 

 

Q. 小玉さんはアメリカで5年の指導経験がありますが、日本とアメリカの教育の違いをどのように感じますか?

日本および多くの東アジア諸国が反復練習による基礎学力の定着を重視するのに対して、アメリカや西欧の教育では考え方を理解し、表現することを重視する傾向にあると思われます。

例えば算数の九九の習得に関して、日本では九九をすらすらいえるまで反復練習し、小学校2年生のうちに全員が覚えられるまで教師がサポートするのが普通です。

アメリカにおいては掛け算の概念(意味)を理解させることを重視し、学年が上がるにつれて徐々に覚えていけばよいというスタンスをとることが多いように思います。

また、アメリカの学校教育では、プレゼンテーションの練習やディベートなど、コミュニケーション力・表現力の養成に注力されている点が素晴らしいと思います。

ボランティアやインターンシップ(アルバイト)を奨励するなど、学生のうちから社会とかかわる経験を積ませ、社会性を育てている点も日本が見習うべきではないかと感じています。

Q. 国際化やデジタル化など社会環境が変わる中、公文の教育は今後どう変化するのでしょうか?

「これからの時代を生きていく子どもたちに、どのような基礎学力を身につけさせてあげたらよいのだろうか?」というのは、保護者の皆様にとって共通の問いだと思います。数学や語学といった学問はほぼ体系化されて確立しており、その質が大きく変わることはないと思います。

一方で、インターネットで誰もが容易に情報にアクセスできるようになり、知識を丸暗記するよりも情報を正確に理解・解釈し、課題解決に応用できる力が重要になると思います。

その意味では、「社会」「理科」といった知識教科よりも、「国語」や「英語」、「数学」といった技能教科の重要性が益々高まるのではないでしょうか。そこでの問題は「どこまで数学力や国語力を高める必要があるか?」ということだと思います。

将来に就きたい職業等にもよって一人ひとり異なると思いますが、公文では「できるだけ深く学ぶことで、より高度な思考力や読解力を身につけてほしい」と考えます。

数学であれば、先に進めば進むほど学習課題は抽象的かつ複雑になり、より高い思考力(数式的・幾何的情報の関係を整理して体系化したり、問題を解くプロセスを構築して計算処理を実行したりといった頭の働き)が必要となります。

できるだけ高いレベルまで学習し、より高度な思考力を身につけてほしい。国語であれば、より抽象度・語彙レベルの高いテキストに触れることを通じて、読解力・表現力を身につけてほしいと考えています。

Q. 日本が国際化を進めるために、教育の観点から変える必要があるとお考えの点はありますか?

日本の人口減少・市場縮小を受けて、企業の海外展開等、国際化の必要性は今後も高まっていくと思います。コミュニケーション・ツールとしての英語力の必要性が叫ばれて久しいですが、諸外国と比較しても日本の中高生の英語力は高いとは言えない状況です。

日本の学校教育について個人的に思うことは、どの分野もまんべんなく均等に、ではなく、中学校から選択制にして特定分野をより深く学べるようにする(理科であれば、物理・化学・地学・生物学のうち1つか2つを選択してより高度な内容を学ぶなど)とともに、数学・英語の技能教育により多くの時間数を費やせるようにする(例えば英語のコマ数を週4時間から8時間に増やし英語力を大幅に高められるようにする)など、カリキュラムに柔軟性を持たせる方が良いのではと考えます。

何事にも「選択と集中」がレベルを上げるための鍵だと考えます。

Q. 北米創立40周年おめでとうございます。さらに40年後の公文の姿をどのようにお考えですか?

ありがとうございます。公文の目指すところは、1958年の創業以来一貫して変わっておらず、今後も大きく変わることはないと思います。

今後、AI等の技術は益々発達していくと思いますが、公文の生徒を伸ばす力の根源は指導者であり、この点は40年後も変わらないと考えます。進化するIT技術を上手に取り入れ、顧客サービスの質を向上させていきたいですね。

現在、カナダ・アメリカ・メキシコの3か国で合計約2,500の公文教室がありますが、40年後は公文の教育に賛同して下さる方がもっともっと増え、10,000を超える教室が展開できていたらうれしいですね。

また2018年にパナマ、2020年にコスタリカ、2023年にグアテマラと新たに教室を展開する際に、現地にお住まいの方で「以前、アメリカやメキシコでわが子に公文を学習させた経験がとても良かったので、自分もこの国に公文式学習を広めたい」とおっしゃってくださる方がとてもたくさんおられ、そのような方々が公文式指導者となって教室を運営してくださっています。

今後も賛同していただける方を増やすために、「学習してよかった、学習させてよかった」と思っていただけるよう、今通ってくださっている一人ひとりの生徒さんを最大限に伸ばす努力を続けていきたいと思います。

 

 

前編「達成経験を持たせることで自信と意欲を育んでいく」

 

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