連載1025 食料危機は本当なのか? 食料自給率38%を煽る日本政府の欺瞞 (上)

連載1025 食料危機は本当なのか?
食料自給率38%を煽る日本政府の欺瞞 (上)

(この記事の初出は2023年5月30日)

 日本の食料自給率が38%と低いことが、政府やメディアによって盛んに問題視されている。ウクライナ戦争、気候変動により、食料危機が叫ばれているいま、食料自給率を高めるべきだというのだ。
 しかし、食料自給率と食料危機は関連しない。食料自給率を上げることに、それほど意味はない。それより、日本がすべきことは、食料安全保障という観点から、食料政策を見直すことである。そして、気候変動対策を積極的に行うことだ。

 

食料自給率と食料危機は関連しない

 誰もが知るように、日本の食料自給率は低い。4割に満たない38%である。そのため、この数字が政府やメディアで強調されるたびに、私たち国民は、もし食料が輸入できなくなったらどうしたらいいのか? という不安に苛まれる。
 ウクライナ戦争はもとより、それ以前から続いてきたコロナ禍、世界的なインフレと、食料危機の原因はいくつもある。さらに、最近は気候変動の激化で、農産物の不作が続いている。
 こうなると、食料危機が現実のものとなるのでは?と思ってしまう。そして、なんとか食料自給率を上げなければと考えてしまう。
 しかし、冒頭からはっきり書いてしまうと、日本は、いくら食料自給率が低いからといって、食料危機に陥ることはありえない。食料自給率と食料危機とはなんの関連性もないからだ。

農林水産省の自給率アップキャンペーン

 食料自給率が低いことを問題視しているのは、主に農林水産省である。農林水産省は、以前から、日本の食料自給率が低いことを強調し、これを引き上げることを提唱している。大手メディアも、それに乗っかり、「日本は食料安全保障のために自給率を引き上げるべきだ」と言っている。
 農水省が示す、食料自給率のデータは次のとおりだ。

●食料自給率……38%(カロリーベース)、63%(生産額
ベース)
●食料国産率……47%(カロリーベース)、69%(生産額
ベース)
●飼料自給率……25%
(農林水産省HP『知ってる?日本の食料事情2022』より)

 さらに農水省は、次に示すグラフ「日本の食料自給率の推移」を掲げて、自給率の向上を目標に掲げている。それは、「令和12年度(2030年度)までに、カロリーベース総合食料自給率を45%、生産額ベース食料自給率を75%に高める」というものだ。

[日本の食料自給率の推移]
https://foimg.com/00065/srpgUL

しかし、これは農水省の予算獲得のためのキャンペーンで、ほとんどなんの意味もない。食料自給率を引き上げたからといって食料危機は防げない。
 なぜそうなのか?
 もっとも簡単な例で言えば、北朝鮮だろう。北朝鮮は食料自給率ほぼ100%である。しかし、国民は常に飢えている。恒常的に食糧危機の状態にある。
(つづく)

この続きは6月21日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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