連載1044 NYも東京も株価上昇が止まらない。 しかし、もうパーティを切り上げるときでは? (完)

連載1044 NYも東京も株価上昇が止まらない。
しかし、もうパーティを切り上げるときでは? (完)

(この記事の初出は2023年6月20日)

 

欲望に基づく資本主義の限界が見える

 現代の資本主義は、「欲望資本主義」と呼ばれ、本来、人間の暮らしに必要でないものを必要と思わせ、それを消費することで成り立っている。それを消費する満足感、高揚感のなかで、先進国の人々は暮らしている。
 1990年以降、新型家電、PC、携帯電話、スマートフォン、インターネット、テレビゲーム、ソーシャルメディア、AI、そしてチャットGPTなどが次々に登場して、バブルをつくってきた。
 これら実需でないものの消費で経済規模が拡大し、経済は成長し、金融は回ってきた。
 しかし、こうした欲望に基づく資本主義が生み出したバブルは、もう限界だろう。金融バブルで言うと、IT投資による「ドットコムバブル」の次は、サブプライムローンによる「住宅ローンバブル」だった。これがリーマン・ショックで崩壊すると、政府は中央銀行に命じて、「金融資産バブル」をつくった。これは「国債バブル」でもあった。なんと、日銀はその最先端を行き、異次元バズーカ砲による「量的緩和バブル」をつくった。
 この量的緩和バブルがコロナショックで崩壊すると、政府は財政出動を駆使して膨大な借金をつくった。こうしてバブルは継続し、ついに、その最終局面を迎えようとしているのではないだろうか。
 日経平均は、外国人買いによって、その実態が隠されているが、やがて外国人は大量に降り浴びせに入るだろう。

気候変動が株価に大きく影響する

 日本の場合、このまま経済低迷を続け、円安によるインフレが収束しなければ、バブルの崩壊を防ぐ手立てはもう残されていない。基軸通貨国のアメリカ、堅実財政国のドイツ(= EU)は別として、とくに日本は金融緩和を続けるほか手はなく、完全に詰んでいる状態だ。
 そのため、6月16日の日銀の金融政策決定会合後の会見で、植田総裁は、「緩和続行」を明言し、株高について聞かれると、「日本が比較的堅調な成長を続け、企業収益も高水準で推移すると予想されていることが、大きな原因ではないか」と、完全にズレている(あるはわざとズレた)見方を示した。
 今後、株価の動向を大きく左右するのは、なんといっても「気候変動」「地球温暖化」だろう。気候変動による農産物の不作。それが引き起こす食糧不足。そして、ウクライナ戦争が招いたエネルギー不足。こうしたことが絡み合って、最終的に株価に影響する。
 単純に、温暖化対策に後ろ向きな企業に投資家は投資しない。日本企業は温暖化対策では大きく遅れている。
 今年の夏、気候変動はさらに激しくなるという見方がある。それは、今年の海水温が異常に高いからだ。すでにスーパーエルニーニョになっていると言われている。
 となると、世界中で農産物の収穫量が落ちるだろう。いま私たちは、実需こそ経済の根本であることに気づくべきだ。
 そろそろ、株価投資から降りる。パーティがたけなわのうちに、「お先に—-」と言って、速かに退出すべきではないだろうか。パーティはしばらくすれば、また開かれる。いつまでも同じパーティ会場にいても意味はないのではなかろうか。


(つづく)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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