連載1088 覇権国アメリカの「内憂外患」 万引き、不法移民、高齢大統領、ウクライナの「4重苦」(中1)

連載1088 覇権国アメリカの「内憂外患」 万引き、不法移民、高齢大統領、ウクライナの「4重苦」(中1)

(この記事の初出は2023年9月12日)

 

アメリカが陥った「内憂外患」の「4重苦」

 民主党のバイデンが大統領になってから、アメリカの分断・混迷は、トランプ時代より深まった。それとともに、世界覇権国家としてのリーダーシップも弱まり、それにウクライナ戦争が拍車をかけている。
 まさに、アメリカはいま「内憂外患」状態にある。それを象徴するのが、「万引きの横行」「街に溢れる不法移民」「高齢大統領のボケ言動」「長期化するウクライナ戦争」だろう。
 以下、この「4重苦」について見ていきながら、今後のアメリカについて考察する。なんと言っても、来年は大統領選挙である。
 このままの状態が続けば、次期大統領がバイデンになろうとトランプが返り咲こうと、アメリカの未来は暗い。それは、「属国」である私たち日本の将来も暗いということだ。

サンフランシスコ「ユニオン・スクエア」の荒廃

 このままでは、アメリカ社会が根底から崩れてしまうのではないかと危惧されるのが、「万引き」の横行だ。いまや、アメリカが「万引き天国」であることは、世界に知れ渡っている。
 万引きが横行しているのは、民主党の“牙城”とされる自由でリベラルな都市。いわゆる「サンクチュアリシティー」(sanctuary city:聖域都市)」である。
 サンクチュアリシティーの一つ、サンフランシスコと言えば、全米一の富裕層都市。シリコンバレーの大発展の影響で、不動産価格も全米で一二を争い、ついこの前までは、世界都市ランキングでもトップ5に入っていた。
 しかし、コロナ禍の最中から、富裕層、中間層が都心部から逃げ出した。毎日のように起こる万引き、強盗、窃盗、盗難、喧嘩、ホームレスの激増、ゴミの山—-で、まともな暮らしができなくなったからだ。
 サンフランシスコの中心、「ユニオン・スクエア」に足を運んでみるといい。その荒廃ぶりに驚く。ユニオン・スクエア周辺は、かつては高級ホテル、ブランドショップが軒を連ね、観光客はケーブルカーを降りて、ショッピングやカフェタイムを楽しんだものだ。
 ところが、いまやほぼ半数の店がクローズしている。
 『サンフランシスコ・スタンダード』(ニュースサイト)によると、ユニオン・スクエアとその周辺で営業していた店舗は、コロナ禍前の2019年には203店あったが、2023年5月時点で107店。なんと、半数近い店舗が撤退してしまった。
 その最大の理由は、万引きの横行で、店を開けていられなくなったからだ。

「ホールフーズ」はたった1年1カ月で撤退

 ユニオン・スクエア周辺では、これまでに「サックス5thアベニュー」「ディズニーストア」「ブルックスブラザーズ」「ノードストロム」などが撤退した。
 こうした撤退劇のなかでもっとも衝撃的だったのが、高級スーパーの「ホールフーズ」だ。ホールフーズは、2022年3月に、ユニオン・スクエアのそばに旗艦店をオープンさせた。富裕層の住む街、サンフランシスコの需要を見込んでのことだったが、この思惑は完全に外れた。
 店にやって来るのは、万引き犯だらけで、なかには武装集団が従業員を銃で脅し、店内で騒いで商品を奪っていくこともあった。また、店内での喧嘩、騒ぎは日常茶飯事となり、従業員も逃げ出す始末。9月には、店内のトイレで麻薬中毒患者が死亡しているのが発見された。
 こうして、ホールフーズはたった1年1カ月、2023年4月に店を閉めたのである。
 当初、万引きは小売店で頻発した。しかし、最近は、ホールフーズのような大型スーパー、デパート、ショッピングモールなどに及び、個人犯罪から組織犯罪に発展している。
 日本では、「闇バイト」で釣られた若者が集団強盗を行う事件が頻発したが、ほとんどの場合、逮捕された。しかし、アメリカでは、ほとんどの場合、逮捕までいかない。なぜなら、彼らは武装しているかもしれないから、命の危険を顧みれば、店員は黙って見過ごすだけになるからだ。
 さらに、後述するが、警察もあえて追いかけない。
 アメリカの小売業業界がまとめたところによると、昨年の万引き被害額はなんと1000億ドル(約14兆5000億円)を超えたという。 


(つづく)

この続きは10月3日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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