連載1093 1年後に迫った米大統領選:トランプ復権が“悪夢”となるこれだけの理由(上)

連載1093 1年後に迫った米大統領選:トランプ復権が“悪夢”となるこれだけの理由(上)

(この記事の初出は2023年9月19日)

 ウクライナ戦争の長期化、中国経済の失速、分断が進むアメリカ、グローバルサウスの台頭、地球温暖化の加速—-混沌とする世界は、今後どうなっていくのか?
 それを考えると、やはり最大のポイントとなるのは、1年後に迫ったアメリカ大統領選挙だろう。
 いまのところ、バイデンVS トランプの再戦という図式だが、はたして本当にそうなるのだろうか? それにしても、不利な材料が山積みなのに、なぜ、トランプの支持率は高いのだろうか?トランプが返り咲くというようなことがあるのだろうか? もし、そんなことになったら、それは世界にとっても、日本にとっても“悪夢”としか言いようがない。

 

まだ1年あるが「高齢対決」で決まりか?

 アメリカ大統領選挙は、来年、2024年11月5日に行われる。あと1年余りあるが、すでに選挙戦は序盤戦に入り、年が明ければ一気に本格化する。
 民主共和両党の候補者は、「予備選挙」(primary)と「党員集会」(caucus)による指名争いを戦い、3月の「スーパーチューズデー」で、ほぼ確定する。
 いまのところ、民主党は現役バイデン大統領、共和党はトランプ前大統領になる見込みだ。
 「本当にそれでいいのか」「就任時にはバイデンは82歳、トランプは78歳になる。前代未聞の高齢対決ではないか」 という声がある。
 しかし、どうしてどうして、2人ともやる気十分なのだから、これはどうしようもない。バイデンにもトランプにも有力な対抗馬がいないうえ、新星も登場していない。
 とくにバイデンは、このままいけば間違いなく指名されるだろう。というのも、今回の大統領選の指名争いレースの初戦を、民主党はアイオワ州からウスカロライナ州に変更してしまったからだ(共和党は変更していない)。

白人の多いアイオワでは支持を得られない

 なぜ、民主党は初戦の場所を変更したのか?
 かねてから民主党は、初戦をアイオワから南部のサウスカロライナに変更すると言ってきた。それは、バイデンのたっての意向で、初戦でどうしても勝利を勝ち取りたいからだった。
 前回の2020年の指名争いレースで、バイデンは初戦のアイオアで惨敗を喫し、さらに2戦目のニューハンプシャーも落とした。そうして、4戦目のサウスカロライナでやっと初勝利を挙げた。この轍を踏みたくないというわけだ。
 民主党は昔と違い、いまは白人より黒人やヒスパニックの支持者のほうが多い。ところが、アイオワは人口の約9割を白人が占めるため、民主党にとっての本来の支持層が結果に反映されない。
 逆に、サウスカロライナは、黒人人口は約3割だが、民主党支持層に限ると6割を超えている。つまり、初戦を確実にモノにして勢いをつけようというのだ。

対抗馬の一番手はケネディ・ジュニア

 これまでの大統領選挙を振り返ると、アイオワの初戦はその後の大統領選挙の帰趨を大きく左右することがたびたびあった。
ジミー・カーターやバラク・オバマは、当初は3番手、4番手のダークホースに過ぎなかった。それが、初戦のアイオワで勝って注目され、一気に大統領まで駆け上ったのである。となるとバイデンとしては、初戦で新星が登場するのを、どうしても避けなければならない。
 しかし、これまでのところ、バイデンを脅かす可能性がある候補は登場していない。立候補を表明しているなかでの1番手は、ロバート・F・ケネディ・ジュニア(69)。誰もが知るケネディ元大統領の甥で、ロバート・ケネディ元司法長官の息子である。
 ケネディ家のプリンスだけに、一部に熱烈な支持があるが、陰謀論を唱え、コロナ禍のなかで反ワクチンを主張し続けたので、民主党員も親族も眉をしかめている。
 とくに、妹のケリー・ケネディは、兄を「非常に危険な人物だ」とメディアのインタビューで語っている。


(つづく)

この続きは10月11日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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