時を得たりと「裏金」「政治とカネ」の大報道 しかし日本はなにも変わらないだろう (完)

時を得たりと「裏金」「政治とカネ」の大報道
しかし日本はなにも変わらないだろう (完)

(この記事の初出は2023年12月19日)

日本はマシなほう?世界汚職ランキング

 しかし、基準がないとはいえ、やはり贈収賄が横行し、カネとコネで物事が決まるシステムは、庶民にとっては堪え難い。民主社会では、カネの動きは常にクリーンで、政治はそれに基づいて行われるべきだ。
 そこで、世界各国の政治家・公務員がどれだけ腐敗・汚職にまみれているかという調査(腐敗認識指数)があり、それを見ると、日本はそれほど腐敗している国ではない。
 「腐敗認識指数」(CPI)というのは、「トランスペアレンシー・インターナショナル」(TI)が1995年以来毎年公開しているもので、世界銀行や国連開発計画などが世界各地で行う「あなたは自国公務員がどのくらい腐敗していると思いますか」「公務員に賄賂を要求されましたか」といったアンケート調査をもとに、スコアを弾き出している。
 このCPIの2023年度のランキングによると、1位はデンマーク、2位はフィンランド、3位はニュージーランド、4位はノルウェー、5位はシンガポールとなっていて、日本は18位である。スコアはトップのデンマークが90ポイントで、トップ10諸国は80ポイント以内、日本は73ポイントである。このスコアがどれくらいの透明度を表すかはわからないが、日本と同ランクには英国、フランスなどがいて、アメリカは日本より低い24位、69ポイントである。
 ちなみに、アジアでは、中国が65位、韓国が31位、台湾が25位、香港が12位、タイが101位、ベトナムが77位である。

キャッシュレス、デジタル化で解決できるのか?

 政治とカネの問題を解決する一つ方法として、デジタル化が挙げられている。政治資金はデジタル化をした上で管理すべきというのだ。
 キャッシュレスにして、政治団体の献金などはすべてデジタル口座で管理する。そうすれば、流れは透明になり、単純な記載ミス、事務ミスでは言い逃れできなくなるというのである。
 すでにデジタル庁も発足し、日本政府は「デジタル・ガバメント実行計画」なるものを策定している。
 また、政治資金収支報告書を提出する際、国会議員関係の政治団体は総務省のオンラインシステムを使うことが努力義務とされている。しかし、その利用率は、たったの2.7%。「煩雑で使い勝手が悪い」というのがその理由だ。
 ただ、システムをよく見ると、わざと使い勝手が悪くしているようにしか思えない。
 欧米諸国は、政治家や政党の政治資金や選挙資金のデータは、オンライン提出が当たり前になっている。アメリカでは、連邦選挙委員会が、大統領や上下院議員と選挙の候補者の収入や支出、それに一定の金額以上の寄付をした個人や企業の名前などをオンラインで公開している。
 はたして、今回の件で、日本の政治はどうなるのか?
朝日新聞社は、12月16、17日に全国世論調査(電話)を実施し、その結果を公表した。それによると、自民党は今回のことで体質を変えられると思うかという質問に対し、「変えられない」が78%、「変えられる」は17%に過ぎなかった。
 おそらく、日本はまだまだ衰退を続けるだろう。とことん落ちないと、この国は変わらないと思う。

(つづく)

 

この続きは1月22日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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