ウクライナ、ガサだけではない戦争の惨禍 2024年、世界は「無法地帯」になるのか? (完)

ウクライナ、ガサだけではない戦争の惨禍
2024年、世界は「無法地帯」になるのか? (完)

(この記事の初出は2023年12月26日)

パリ協定再離脱でCO2を出し放題に

 トランプ復帰が、人類に最悪の結果をもたらすとしたら、パリ協定からの再離脱だろう。トランプは、筋金入りの地球温暖化否定論者で、昔から「それはでっち上げだ」(It’s a hoax.)と言ってきた。
 したがって、気候変動対策に予算を割くなどもってのほかで、大統領再選となれば、COPの枠組みを離れ、カーボンニュートラルを反故にし、CO2を出し放題になるだろう。
 アメリカはいま、分断が進んでいる。共和党と民主党の対立は決定的になり、両者はもはや水と油と言っていい。連邦政府はもとより、国内ではレッドステートとブルーステートでは、まったく別の国のようになってしまった。そのため、世論調査では、第三極を求める声が強くなっている。
 なにより、次期大両候補が2人とも高齢者では、将来を託すにはリスクが大きすぎる。
 そのため、先日のギャラップの世論調査では、成人の
63%が「第3の主要政党が必要である」という考えに同意している。この割合は1年前から7ポイント上昇し、ギャラップが最初にこの質問を行った2003年以来でもっとも高かった。

「同害復讐法」で世界は動いてきた

 このような混迷する世界のなかで、最近流行っているのが「終末論」(eschatology)である。このまま行くと、世界は「最後の審判の日」(Doomsday:ドゥームズデー)を迎えるというのだ。
 しかし、宗教観など、現実世界の救いなどにならない。現実をどう認識し、どう乗り越えて行くかがすべてである。世界で起こる戦争、紛争の根底には、世界最古の法典という『ハムラビ法典』にある「「目には目を、歯には歯を」という復讐公認の「同害復讐法」(lex talionis :レクス・タリオニス、ラテン語)がある。
 イスラエルの行動はこれを地で行き、すでにガザ北部は瓦礫の山と化し、多くの人命が失われた
 しかし、復讐を公認すれば「憎しみ」の連鎖が起こる。これを断ち切る方法はいまのところない。
 『新約聖書・マタイの福音書』は、イエスは「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」と言ったと述べている。悪をもって悪に報いず、善をもって悪に報いる。これでキリスト教は愛の宗教とされたが、キリスト教徒がこれを実践した歴史はない。

子供を殺されれば核爆弾テロだってやりかねない

 日本のメディアは、くどいほど国際法と人道主義を持ち出して平和を訴える。しかし、戦争はそんな綺麗事を言っても終わらない。また、一部評論家は宗教戦争という構図をもって解説するが、ここまで殺戮が繰り返されれば、もはや異教徒対立などの構図は意味がない
 イスラエルのネタニヤフ首相は、「ハマスを殲滅するまで戦争をやめない」「これは野蛮人に対する文明の戦いだ」と言っている。
 世界各地で起こっている紛争、戦争の犠牲になっている子供たちの姿を、テレビ映像、ネット動画で見るたびに、耐え難い感情が湧き起こる。涙なしでは、血だらけの子供を見られない。
 子供を殺された親の憎しみほど深いものはない。核爆弾を背負った自爆テロだってやりかねないだろう。はたして誰がこれを止められるだろうか?

(つづく)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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