銃担いだ覆面男らがスケートで「ブル、ブル!」

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共同通信
公安警察の車両を先導するスケート部隊の隊員=2023年12月、アフガニスタン・カブール(共同)

 米軍とのジハード(聖戦)に従事した黒髭のムジャヒディン(イスラム戦士)らが街の安全を守ろうと、インラインスケートを履いてアフガニスタンの首都カブールを疾走している。イスラム主義組織タリバン暫定政権の治安機関が発足させた「スケート部隊」だ。楽しげな様子は怖そうなタリバンのイメージ向上にも役立っている。パトロールに同行した。(共同通信=新里環)

 覆面をした隊員が自動小銃を持ってピックアップトラックの荷台に乗り込み、5~6台の車列で警察署を出発した。大通りに出ると、時速約30~40キロで走る車体を手でつかんで助走をつけ、クモの子が散るように方々へと向かった。「ブル、ブル(行って、行って)!」。隊員らは車列前方で市民の車に指示して道を確保し、息を切らしながら戻ってきた。

 スケート部隊が所属する公安警察は主に都市部の治安維持が任務で、パトロールのほか、反タリバン勢力によるゲリラ戦や抗議デモの鎮圧に当たる。部隊は2023年7月に発足し、当局の車両が渋滞を回避できるように行く先々で交通整理している。

 「治安向上のためなら何でもやる」。そう語るサーレモハマド・ナジム副長官(35)によると、隊員は約50人。当初は数人しかスケート経験がなかったが、特訓を経て全員が滑れるようになった。「サイレンを鳴らす必要がなく、騒音対策にもなる」と強調した。

 タリバンは2021年8月に復権した。女子教育の制限などで欧米から批判を浴びるが、米軍や旧国軍との戦闘が終わって治安が改善したと評価する声もある。沿道で隊員を見たモハマドザファ君(13)は「すごい。僕もいつか国を守りたい」と笑顔を見せた。

 隊員らは後ろ向きで走行したほか、3人で一列に手をつないで真ん中の隊員があおむけで寝そべるように滑り、特訓の成果を披露した。パトロール終了後、ホシャール教官(31)は「これがわれわれの軍事パレードだ」と自信ありげに語った。

街をパトロールするスケート部隊の隊員=2023年12月、アフガニスタン・カブール(共同)
アフガニスタン・カブール
スケート部隊について説明する公安警察のサーレモハマド・ナジム副長官=2023年12月、アフガニスタン・カブール(共同)
スケートの特訓成果を披露する隊員ら=2023年12月、アフガニスタン・カブール(共同)