ニューヨークでの生活では驚きが「スタンダート」と化している。筆者は27歳、この夏憧れのニューヨークにやって来た新参者だ。日本(神戸)で人生の大半を過ごしたせいか、いちいちビックリするようなことが毎日のように起こるので、文化の違いやカオスな出来事を中心にポップにつづっていくことにした。
〜 ドアを開けて、みんなを幸せに 〜
ところでみなさんは地下鉄のヒーローに出会ったことがありますか? 突如となく現れ、改札横の非常ドアを開けて、みんなの乗車賃をタダにしてくれる見知らぬおじさん。筆者はこのおじさんたちのことを勝手に「地下鉄のヒーロー」と呼んでいる。

ニューヨークの地下鉄は、どこへ行こうとも改札を通るごとに2.9ドル。だが正直なところ、日本の地下鉄みたいに「絶対に払わないと通れません」みたいな雰囲気は漂ってないので、地下鉄代を浮かせるために、改札をジャンプするモンキーや深海魚のように下をくぐり抜ける強者、ぬるりと横からすり抜ける忍者など、日常茶飯事で目撃する。
あまりにも電車賃を踏み倒す人が多いので、真面目に毎日メトロカードをスワイプしている身としては、たまに「はて?」と思ってしまうが、こんなしょうもないことで警察のお世話にはなりたくない。そんな時に現れるのが地下鉄のヒーローなのだ。

地下鉄の改札横には、どこの駅にも必ず非常ドアがあって、内側(ホーム側)からのみ開くようになっている。そしてなぜか、係員でもないただの一般人がそのドアを開けてくれることがある。その人がドアを開けると、改札の外にいる人は1人、また1人・・・と改札を通らずにホームへ入っていき、気がつくとかなりの人が無賃入場をしている(笑)。
筆者がこの光景を見るのが好きな理由は、このドアを開けている人が何くわぬ顔でヒーローのような佇まいをしているから。どこか誇らし気で、きっと「今日は良いことをした」と思っているのだろう。そしてドアをくぐり抜けていく人たちも、そんなヒーローの姿に感化されて「センキュ〜〜!!」とどこかうれしそうな顔になっていくのも面白い。
今日もどこかで地下鉄のヒーローは、物価高のニューヨークから人々の2.9ドルを守るため、良い顔をしながらドアを開けているのだろう。※この記事は決して無賃乗車を勧めているワケではございません!
著者のプロフィール

ナガタミユ(Miyu Nagata)エディター/ダンサー
兵庫県出身の27歳。幼少期に観た「コーラスライン」をきっかけに舞台芸術の世界にどっぷりハマって以来、20年以上踊り続けている。また、日本の出版社で編集者として活躍したのち「書いて、踊る編集者」としてさらなる飛躍を遂げるため、2024年8月から拠点をニューヨークに移す。
過去のエピソード
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