2025年3月25日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

ウクライナの次は台湾・日本? アメリカに見捨てられる「衝撃シナリオ」!(上)

 ウクライナ戦争停戦への動きを見て、「次は、台湾、日本ではないか」という声が出るようになった。トランプの数々の発言は、アメリカはたとえ同盟国でさえ守らないということを示唆しているからだ。
 台湾、そしてこの日本。もし、アメリカが守らないということがはっきりすれば、中国は労せずして台湾を手に入ることができる。すでにそのシナリオ、軍事力を使わない台湾併合シナリオは、現実味を増している。
 そうなったとき、日本はどうすればいいのか?

あの元最側近のペンスでさえトランプを非難

 ウクライナ戦争停戦に向けての数々のトランプ発言により、世界中で不安と不信が増幅している。ロシアと対峙している欧州諸国はもとより、私たち日本が位置する東アジアにおいても、それは深刻だ。
 なにより、トランプがウクライナを見捨て、完全にロシア寄りであることがはっきりし、「次は台湾、日本になる」という声が高まっている。
 もはや指摘するまでもないが、トランプは単なる“オレ様”男で、理想も信条も博愛もない。すでに自分をナポレオンにたとえ、歴史に名を残す天才と勘違いしているので、手の打ちようがない。しかも、政権内はすべてシンパで固め、「裸の王様」状態になっている。
 こうなると、なんらかのことで退陣を期待するしかないが、そうなっても、寝返って子分になった副大統領JDヴァンスがいるので、状況は変わりようがない。
 第1次政権でトランプを支えた際側近、ペンス元副大統領も、あまりのことに呆れ果て、最近、こうSNSに投稿した。
「ミスター・プレジデント、ウクライナが戦争を始めたのではなく、ロシアが残忍な侵略によって無数の命を奪ったのです」

ウクライナに降伏を迫る数々のトランプ暴言

 では、トランプの最近のウクライナ「見殺し」「切り捨て」発言を振り返ってみよう。選挙期間中、「24時間以内に戦争を終わらせる」と豪語したトランプは、結局は、ウクライナに対して「負けてしまえ」と言っている。
「われわれは資金を取り戻す。不公平だからだ。レアアースであれ、石油であれ、得られるものはなんでも求めている」
「選挙なき独裁者であるゼレンスキーはもっと迅速に動くべきだ。そうしなければ、国が残らないだろう。戦争は悪い方向に向かっている」
「ゼレンスキーは外国援助の“うまい汁”を吸い続けたいのだろう」
「戦争を始めたのはロシアではなくウクライナだ」
「プーチンが望めばウクライナ全土を手に入れられるだろう」
「ゼレンスキーが何年もなんのカードも持たずに交渉するのを見てきた。うんざりする」

平和を望むなら「弱肉強食」を受け入れよ

 トランプのこうした発言、対ウクライナ戦争に対するスタンスは、前大統領バイデンのスタンスとは180度違うと言っていい。違うというより、自分の言動が国際社会になにをもたらすのか、まったくわかっていない。
 トランプ文脈をそのまま読めば、強国に侵略された国は抵抗せず占領を受け入れるべきだ。そうすれば、戦争など起こらない。ウクライナは即座に降伏すべきだったということになる。
 つまり、この世界は「適者生存」(survival of the fittest)の「弱肉強食」(law of the jungle)の世界なのだから、その現実を受け入れよということになる。
 となると、これを極東世界に置き換えて、例えば台湾が中国に攻撃・併合されても台湾は抵抗戦争してはいけない。中国が尖閣諸島を力ずくで日本から奪っても、それを受け入れよ。
 もし、抵抗するなら、それは台湾や日本が全面的に悪いのであり、平和を望むなら中国の要求をすべて飲むべきだということになる。
 つまり、台湾や日本に対して、アメリカは守らない。台湾防衛のための「台湾関連法」も「日米安保」も無意味と言っているのと同じだ。これでは、台湾も日本もアメリカ不信に陥ってしまうのは当然で、トランプ第2次政権発足以来、衝撃的な動揺が続いている。

この続きは3月27日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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