典型的な庶民娘は在学中にトランプに共鳴
ではここで、キャロライン・リービットの履歴を述べておきたい。まずはっきり言って、彼女は、東部の典型的な庶民娘である。
ニューハンプシャー州の小さな街、アトキンソンの出身。実家はアイスクリーム店と中古車販売店を経営しており、敬虔なカトリック教徒で、けっして豊かではなかった。
リービットはそんな家族の中で、高卒後、初めて大学に行った。近所にあるベネディクト派の私立セントアンセルム・カレッジで、ここでBAを取得した。
セントアンセルム・カレッジは、リベラルアーツカレッジとして、全米ランキングで100位前後のカレッジ。東部には、旧セブンシスターズに属する名門リベラルアーツカレッジがいくつもあるが、そこに行けなかったことを考えると、学力は高くなかったはずだ。
しかし、彼女は大学で保守思想に目覚める。両親の苦労を見てきたためか、MAGAを標榜するトランプに共鳴する。そのため、トランプに批判的な学校新聞に猛烈な抗議文を送ったという。
そして、FOXニュースでインターンを始め、第1次トランプ政権が発足すると、ホワイトハウスでもインターンとなった。
夫は32歳年上の不動産事業者で1児の母
こうして、政治の世界に足を踏み入れた彼女は、2022年、ニューハンプシャーの第1選挙区の下院議員選挙に25歳で出馬。予備選を勝ち抜いたものの、本選では惜敗した。ニューハンプシャーは、強固なブルーステート。そこでの共和党女性候補の善戦は光った。
彼女の美貌と若さ、そしてSNSを駆使した選挙戦に目をつけたトランプは、2024年の大統領選に報道担当としてリービットを起用する。
すると、テレビ映りのいいレービットは、若いG世代の人気を集め、G世代・ミレニウム世代の票の獲得に貢献した。
この間、リービットは、なんと32歳年上の不動産事業者ニコラス・リッチオと結婚。彼女には、高校時代から6年間付き合った恋人がいたが、資産600万ドルの初老の男のほうを選んだ。
そうして昨年の夏、長男を出産すると、産後1週間あまりで、銃撃事件を受けたトランプの下に駆けつけて、報道担当の仕事に復帰したのである。
行き過ぎた「Woke」(ウォーク)の反動
このような個人のヒストリーから見ると、リービットはかつての「ブロンドビューティ」とはまったく違うタイプである。
つくられたイメージとはいえ、ブロンドヘアでブルーアイズ、白い肌という、いわゆる“金髪美人”は、「どこか抜けている」(天然ぼけ)と思われてきた。古くは、マリリン・モンローがそうである。しかし、リービットにそんな面はない。
リベラルによるマイノリティの擁護、権利の拡大は、「フェミニズム」「人種差別撤廃運動」(movement against racism)「ポリコレ」(Political Correctness)「DEI」(Diversity:ダイバーシティ、Equity:エクイティ、Inclusion:インクルージョン)と広がり、金髪美人を片隅に追いやった。
なにしろ、ミスコンすら否定され、たとえ行われたとしても「ブラックビューティ」「カラードビューティ」がグランプリに選ばれるようになった。
また、体型も差別とされ、太った女性もミスに選ばれ、さらにLGBTQのほうが素晴らしいという価値観の倒錯にまで行き着いた。
つまり、トランプ政権による「ブロンドビューティ」の採用は、「反リベラル」「反ウォーク」という、トランプを当選させたアメリカ社会のいまの風潮を反映している。
トランプは、施政方針演説で、いみじくもこう言った。
「今日から、ジェンダーは二つしかないというのが、アメリカ政府の公式方針になる。男性と女性だ!」
この続きは5月16日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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