「トランプ米政権が引き起こす問題にどう対応したらいいのか?」
一時帰国中、毎日のように聞かれた質問だ。ビジネスパーソンや学生、企業のトップ、官僚に至るまで、真剣そのもの。テレビは、トランプ関税に翻弄される会社や工場の話、ハーバード大での留学生弾圧などのニュースを連日取り上げている。

特に、「DEI(多様性・公正性・包括性)」の行方について、日本企業は不安を募らせている。トランプ氏はことし1月、大統領令でDEIの撤廃を打ち出した。女性や人種的マイノリティ、性的マイノリティを積極的に採用・活用する対策を進めてきた企業は今、「一体どうしたらいいのか?」と自問している。
弁護士によると大統領令には、議会の承認を得ずに法的拘束力がある。つまり、DEI「撤廃」と舵を切ったことに対して、DEIを続けると違法行為になるという。同大統領令には、DEIという名の下に「危険で侮辱的かつ不道徳な人種や性別に基づく優遇措置を進め、実施しており、国家の公民権法に違反するおそれ」があるとまで書いてある。
さらに、連邦政府機関には、企業など民間による「違法な」DEIを取り締まるように指示を下している。
実際に、取り締まりは始まっている。ABCテレビと親会社ウォルト・ディズニーに対し、規制当局である連邦通信委員会(FCC)が、「DEIを使って(雇用面などで)差別をしている」として調査に乗り出した。
DEIを続けていれば、お上の調査が入り、最悪の場合「違法」として訴追される可能性さえある。この点には最大の注意が必要だ。
米企業の対応は素早い。6月29日に開かれるアメリカで最大のNYCプライド・パレードへの寄付やフロートを出すのを自粛する企業が相次いでいる。撤退したのは、シティバンク、マスターカード、ペプシ、日産などだ。一方で、ロレアル、ターゲット、ドイツ銀行などはスポンサーシップを継続。調査が入っているABCも恒例の生中継をする。
米企業の対応は二つに分かれているが、日系企業はどうしたらいいのか。日系企業は今のところ、連邦政府の「レーダー下」にある。しかし、当局に訴追されるというリスクには真剣に向き合うべきだ。DEI活動・方針についてのウェブサイトでのリリースは削除した方がいいだろう。株主に対する年次報告書なども同様だ。
現在、どれほどアメリカ市場でのビジネスが重要なのかをアセスし、DEIリスクについて考えるべきだ。企業だけではない。アメリカに住む個人それぞれが、自分にどんなリスクが降りかかってくるのか、一度立ち止まって考え、今後の「プランB」を考える時が来ている。
(写真と文 津山恵子)

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。専修大文学部「ウェブジャーナリズム論」講師。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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