2025年7月15日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 参議院選の争点は「消費減税」!しかし、どの政党も絶対に言わないことがある! (上)

 ちょうど1か月後の7月3日公示、7月20日の投票が有力視される参議院議員選挙。全野党が「消費税の減税」を公約として掲げている。これに対して与党は反対の立場を取り、一律の現金給付を打ち出してきた。
 なんのことはない、税金を取らなくするか、取ったうえで戻すかの違いだけだ。つまり、選挙目当ての“目先対策”にすぎない。
 消費減税というと、必ず持ち出されるのが財源問題。消費税は社会保障費に回るだけに巨額であり、どう穴埋めするのかが最大の課題だからだ。
 しかし、各党の案を見ると、まったくの絵空事で、あきれるばかり。しかも、たった一つの解決策だけは、どの党も絶対口にしない。こんな馴れ合いの“目先政治”が続けば、日本はどんどん沈んでいくだけになる。 

「消費減税」VS.「現金給付」の様相に

 今回の参議院議員選挙では、全野党が「消費税の減税」を公約として掲げている。これに対して与党側は、反対の立場を取り、その代わりに物価対策として一律2万円の現金給付を打ち出してきた。
 すでに、国会では論争が始まっているが、聞くのもバカバカしい展開になっている。
 なぜ、バカバカしいと思うのか?
 それは、減税にせよ、現金給付にせよ、「カネで票を集める」という魂胆がミエミエだからだ。そして、もう一つ、彼らが日本の現状と未来について、あまりに楽観的というか、無神経すぎて、「絵空事」としか思えないことを、平気で堂々と主張しているからだ。
 しかも、ついこの前まで、最大の問題とされた「政治とカネ」の問題はいつの間にかたち消えになってしまった。「トランプ関税」と「コメ」(米価高騰)、そして「消費減税」が、いまは毎日ように騒がれている。

野党が公約に掲げる「消費減税」案と財源論

 では、野党が参院選の公約として掲げるという「消費減税」について、どんな内容なのかを、以下、見ていきたい。減税となると、決まって言われるのが財源問題。失われる税収の手当をどうするかということだが、それを含めて、各党はどう考えているのだろうか?
 立憲民主党が打ち出しているのは、1年間の期限を設けた「食料品の消費税ゼロ%」。これを来年度に実施するとして、それまでに物価対策(「食卓おうえん給付金」と命名)として今年度中に一律2万円の現金を給付するということ。
 これらにより、年間約5兆円の税収減が見込まれるが、財源は、税収の上振れ分、政府基金の取り崩し、大企業の租税特別措置などでまかなうという。
 維新の会も食料品の税率をゼロにすることを打ち出していて、財源は、立憲民主とほぼ同じ考えだ。
 国民民主党は、時限的に消費税率そのものを一律5%に引き下げることを訴え、必要な財源を年間10兆円程度とし、玉木代表は、税収の上振れ分などのほかに「(必要とあれば)赤字国債を発行すればいい」と述べている。
 共産党は、将来的には消費税を廃止するとし、緊急で税率を一律で5%に下げ、納税額の正確な把握を目的とした「インボイス制度」をなくすとしている。税収減は、年間15兆円規模と見込み、法人税引き上げ、富裕層への課税強化、国債増発などで対処すると主張している。
 れいわ新選組も、消費税の廃止が理想だとし、直近では最低でも一律5%に引き下げるべきだと主張。消費税を廃止した場合、年間24兆円が不足するが、それは国債発行で対応するとしている。

出まかせが過ぎる!所得1.6倍、GDP1000兆円

 以上、野党の減税政策と財源論を見たが、あまりにも非現実的、楽観的なのに呆れるばかりだ。なぜなら、すでに長期金利の上昇によって、これ以上の国債発行はできなくなっていることが一つ、税収の上振れと言ってもそれは一時的なものに過ぎないということが一つ、さらに、法人税引き上げ、富裕層への課税強化などをすれば、結果的にどうなるかをまったく考えていないからだ。
 ただ、そうは言っても減税をしないということにはならない。減税はすべきだ。ただ、その財源はほかに求めるべきなのに、誰もそれを口にしない。
 そして、あきれてものも言えないのが、自民党の「バラマキ」案である。なんと物価高対策として国民1人当たり2万円(子供と低所得者は4万円)の現金を給付するという。カネで票を集めるという、あまりにも露骨な選挙対策である。
 しかも石破首相は、2040年に日本の名目GDPを1000兆円、国民の平均所得の5割以上の上昇を公約に盛り込むという。現在(2024年度)、日本のGDP616.9兆円で、1000兆円は約1.6倍。急激な人口減から、2040年には1億を割り込む寸前まで人口が減り、高齢人口が約35%となるこの国が、どうやったらこんな目標を達成できるというのだろうか?
 先の「楽しい日本」と合わせ、口から出まかせが過ぎるのではないだろうか。

この続きは7月17日(木)発行の本紙(メルマガ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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