今や世界的なブームとなり、入手困難となっている抹茶。過去1年間で需要が「目眩がするほどのレベル」にまで急増。業界関係者は、昨年からの需要急増は、日本では通常、特別な機会にのみ飲まれる抹茶が、SNSを通して海外の消費者が日常の飲み物として取り入れるようになり「バズった」のが原因と指摘する。

抹茶ファンは、大量生産しやすく、より安価な料理用抹茶より、茶道用に使用される最高級の抹茶を求めるようになっており、それが日本の茶農家や製造業者、販売業者に負担をかけている。24日付のニューヨークタイムズが現状を伝えた。
「誰もが欲しがっている。特にTikTok、Instagramで」と驚くのは、オーストラリアの卸売・小売業者で年間約11トンの抹茶を販売するメゾン・ココ(Maison Koko)社長のマシュー・ユンさん。同社の売上高は近年、月平均10〜20%と健全なペースで成長していたが、今年第1四半期から第2四半期にかけて3倍に跳ね上がった。極めて供給不足なためユンさんは5月、過去には週払いで支払っていた日本からの抹茶の半年分の供給を確保するため業者に100万オーストラリアドル(約60万ドル)を前払いした。
SNSは、抹茶ラテなどの日常の飲料に高品質の抹茶を使用するアイデアを後押ししているようだが、京都の茶葉小売業者サゼンティー(Sazen Tea)のマネージングディレクター、アグネス・バログさんは「抹茶は決して大量生産品として意図されたものではない」と話す。同社は2023年9月、宇治で栽培された最高級抹茶(40グラム、約1.4オンス)を約2700缶販売。1年後の月間販売数は5倍以上に増加し、約1万4000缶に達した。主にアメリカの消費者向けに販売しており、オンライン注文に制限を設けている。そうでなければ「月の在庫が数時間で売り切れてしまう。とても需要に追いつけない」とバログさん。
世界的な需要が日本の抹茶産業を圧迫する兆候は、昨年末ごろから出現。供給が追いつかなくなったため、いくつかの人気ブランドが購入制限を導入したり、価格を引き上げたり、一時的に販売を停止したりした。その時点ではブームはSNSで急浮上した数ブランドに集中していたが、一般的に抹茶は依然として入手可能だった。京都を拠点とする非営利団体グローバル日本茶協会のディレクター、アンナ・ポアンさんは、「買い手が備蓄を試みる中で需要はさらに急増し、やがて日本では入手がますます困難になっていった」と嘆く。
業界は急激な変化に対応する準備が整っていない。日本の抹茶用茶葉を生産する多くの農家は小規模な家族経営で、高齢化が進んでいる。新しい茶の木が成熟するまでに最低でも5年かかる。海外での人気を受け日本政府は、茶農家に他の種類の茶から抹茶への転換を促しているが、ポアンさんによると、「人気がどれほど続くか分からないため、一部は躊躇している」という。「もしかしたら単なる流行かもしれないし、ブームは5年で消えてしまうかもしれない。工場建設などはリスクを伴う。そう簡単にはいかない」
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