教育現場での実践や研究を報告する日本私立小学校連合会・全国教員夏季研修会が8月18日から20日まで横浜で開催され、日本全国で働く私立小学校教員が一堂に会した。初日には、ニューヨーク育英学園全日制インターナショナルスクールの学園祭における劇発表の実践が紹介され、参加者の注目を集めた。

発表を行ったのは、同学園全日制小学部の元教頭で、現在は相模女子大学小学部に所属する米原佑樹さん。テーマは「メディアを活用して、劇の可能性を広げる~ニューヨークの子どもたちの想いに寄り添った劇をつくる~」。多文化社会ニューヨークで学ぶ子どもたちは日々、言語や文化の壁、少人数クラスの制約に直面している。米原さんは、そうした子どもたちが抱える想いを劇の中でどう表現し、昇華していくのかといった問いを出発点にした取り組みを紹介した。
報告では、遠く離れて暮らす友だちとの絆を劇で表現した試みや、わずか2人の児童で25分間の劇を演じきった例を取り上げた。子どもたちは単に役を演じるのではなく、自らの経験や感情を投影しながら物語を紡いでいく。その過程で、録音や映像メディアを積極的に活用することで、日本に転校した児童の音声による出演を可能にしたり、事前に撮影した映像と舞台上の演技を組み合わせたりするなど、新たな表現方法に挑戦した過程も紹介した。
メディアと舞台上の表現を融合させた、今までにない演出方法に注目が集まったが、米原さんは「メディアはあくまでもツールであり、大切なのは子どもたちの想いに寄り添った劇を作ること。劇は単なる発表のための活動ではなく、子どもの想いを表現し、願いを叶えていく場である。それを表現する一つの選択肢としてメディアを使えるようにしておくことが大切」と強調した。
発表後、参加した教員からはメディアを使った表現への賞賛の他にも「ニューヨークで学ぶ子どもたちが力を合わせ、英語や日本語で劇に取り組む姿を知り感動した」「子どもたちの心情を劇の中にリンクさせる手法に驚いた。自分も挑戦してみたい」「子どもたちが作り上げた巨大な背景画が素晴らしい」「遠く離れた友だちとの絆を劇で表現して見せたことや、2人だけであのような劇を創り上げたことに心底驚いた」などさまざまな視点から感想が寄せられ、中には子どもたちの劇に感銘を受けて涙を浮かべる教員も多くいた。
今回の報告は、海外に暮らす日本人子女の教育現場で生まれた実践であると同時に、日本国内の教育にとっても示唆に富む内容だった。ニューヨークの教室から発信された劇づくりの試みは「子どもの心に寄り添う教育とは何か」を改めて問い直す機会を提供したようだ。
ニューヨーク育英学園の子どもたちの挑戦が示したものは、劇の持つ可能性の広がりと、その根底にある子どもの想いや可能性に寄り添う教育の大切さだ。日本と世界をつなぐ教育の現場から生まれた新しい学校劇の形は、今後さらに広がりを見せていくだろう。(情報・写真提供:米原佑樹)

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