2025年10月2日 NEWS DAILY CONTENTS COLUMN 『夢みたニューヨーク、住んでみたら?』

連載『夢みたニューヨーク、住んでみたら?』Vol25. 万博ファッション、何を着ていけば?

ニューヨークでの生活では驚きが「スタンダート」と化している。筆者は28歳、昨年の夏に憧れのニューヨークにやって来た新参者だ。日本(神戸)で人生の大半を過ごしたせいか、いちいちビックリするようなことが毎日のように起こるので、文化の違いやカオスな出来事を中心にポップにつづっていくことにした。

〜 「万博に着ていく服じゃない」 〜

ニューヨークに住み始めてから1年が経過し、初めて日本に一時帰国をした。久しぶりの家族や友人とキャッチアップをし、日本ならではのイベントにも参加したいと思い、「大阪・関西万博」に行ってきた。地元・関西で行われる世界的な催しを一度は見ておきたい、楽しみにしていた。

ありがたいことに、一緒に行った妹がチケット手配から入場予約、パビリオンの予約や食事場所まで全て計画してくれていたので、筆者は本屋でガイドブックを買い、あとは着ていく服を考えるだけでよかった。今回コラムに書こうと思ったのは、この「万博に着ていく服」について。

筆者は服が好きで、その日会う人、行く場所に合わせてコーディネートを組むのが趣味のひとつでもある。なので今回の万博も、「いろんな国のパビリオンに入りたい」「会場内は木でできた大屋根リングがあるそう」「女子2人の万博だからな」「そういえばビールもいろんな国のものが揃っているんだとか」こんなことを考えていると、頭の中で出来上がっていたコーディネートは “かわいらしいドレス(フォーマル寄り)”だった。

そして当日、散々迷った挙句、ニューヨークでこの夏に買った黒のタイトドレスを着ていくことにし、滞在中の実家で「じゃあ行ってくるわ!」と登場すると、家族から「万博に着ていく服じゃない!」と満場一致の “ノー” が飛んできた。だがそんなことでコーディネートを変えるようなことはないので、「いやいや、かわいいと思う服でええやんかあ〜」と言いながら、家を出た。「万博に着ていく服って、誰が決めたん?」

と、そんなことを考えながら会場に到着すると、本当にびっくりした。みんなすごく快適で便利そうな装いをしていて、めちゃくちゃ過ごしやすそうだ。そして何度も万博に通っている人たちは、肩から丸い円盤をぶら下げていて、聞くとそれは入場ゲートやパビリオンの待ち時間で使える折りたたみ式の椅子だそう。忘れていた、日本人の「利便性を叶える力」はものすごいことを。

とはいえ、通気性ゼロ、外にいると変な日焼けをしかねないマキシ丈タイトドレスに皮のブーツを履いた女も、丸1日万博を楽しんだ。妹からは「君より万博に不向きな格好してる人がおるか1日探してたんやけど、堂々の第一位やったわ」とベストファッション賞をいただいたが、この一連の「万博ファッション」の出来事で気づいたことは、少々不便でも心がワクワクする服を着ていたいこと。

この話で思い出したことがある。何年か前に、仕事仲間と夏の音楽フェスティバル・サマーソニックに行ったとき、1日目を終えた時点で4人の荷物が入ったロッカーの鍵の行方がわからなくなり、2日目の荷物が取り出せなくなったことがあった。その時に、みんなそれぞれが荷物の中に入っているものを咄嗟に言い始めた。「彼氏からプレゼントしてもらったメガネが入っている」「シャチハタがカバンに」(なぜサマソニにシャチハタを)筆者は、「2日目の服がハンガーにかけれない!!」だった。確かその時、クレジットカードとか入った財布もロッカーに預けていたのに。

イベントごとにおいて、大事なことは何か? それは人それぞれで、筆者にとっては「ファッション」なのかもしれない。日本滞在の間、いろんな服を着ていろんな人に会いに行こう。

筆者のプロフィール

ナガタミユ(Miyu Nagata)エディター/ダンサー

兵庫県出身の28歳。幼少期に観た「コーラスライン」をきっかけに舞台芸術の世界にどっぷりハマって以来、20年以上踊り続けている。また、日本の出版社で編集者として活躍したのち「書いて、踊る編集者」としてさらなる飛躍を遂げるため、2024年8月から拠点をニューヨークに移す。

前回のエピソード

Vol24. 日本人らしさとは
Vol.23. サウナのような地下鉄は「耐えろ」
Vol22. 日本と大きく違う「サロン探し」

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