■気にいらない者、批判する者を徹底して排除、弾圧
確かにディズニーはポリコレとDEIをやり過ぎで、実写版『リトル・マーメイド』のアリエル役に黒人女優のハリー・ベイリーを起用したりしてきた。白人至上主義のトランプは、これが気に入らないのだ。
さらに、『白雪姫』の主演女優レイチェル・ゼグラーがトランプを批判し続けたことも、お気に召さなかった。彼女は、ソーシャルメディアで以下のような発言を繰り返した。
「トランプ支持者、トランプ有権者、そしてトランプ自身が平和を知ることがないように」「この国には深い深い病がある」「憎悪のもう4年間が続き、私が住みたくない世界へと私たちを傾かせる」
ともかく、トランプは自分が気にいらない者、自分を批判する者を徹底して排除、弾圧する。最近では、8月26日、クリスティ前ニュージャージー州知事がテレビ番組でトランプを痛烈に批判すると、「クリスティのこれまでのスキャンダルを徹底的の捜査し、放映したABCの放送免許を取り消す」と息巻いた。
■「中国に敗ける」という分析、論文が山ほど
さて、ここからは本題だが、今後、アメリカは世界覇権を失うのか? そして、中国の追い上げに敗れ、中国がアメリカに代わって世界の覇権を握るのか?
これを考えてみたい。
かつて「米中逆転」が盛んに言われた。それを聞くたびに、私はそれを一笑に付してきたが、もうそんなことは言っていられないと思うようになった。「米中逆転」は「ありえない」から「ありえる」になったのだ。このごろは、強くそう思う。
不思議なことに、日本ではこのところ「米中逆転」論、「多極化」論は、なりを潜めている。しかし、アメリカでは、トランプ第2次政権になって以後、「このままでは中国に敗ける」という分析、論文が山ほど出されるようになった。
それは、AI、EV、ヒューマノイドロボットなどの最先端テクノロジーにおいて、アメリカが追いつかれ、一部は追い越されているという認識が広まったからだ。
また、中国は製造業大国であり、スマートフォン、産業ロボット、粗鋼、セメント、電解アルミニウム、造船 建機、工作機械、農機具などの生産においては世界一で、アメリカがいまさら製造業を復活させても追いつけないことが明白になったからである。
■ポッドキャスト、論説誌で「米中逆転」論広まる
アメリカ国内の「米中逆転」論「米中覇権交代」論は、大手メディアより、ポッドキャストによってかなり広まっている。多くの専門家やアナリストたちが登場し、中国がいかに進んでいるか、アメリカを凌駕しつつあるかを、長々と話している。
その代表的なのが「Dwarkesh Podcast」で、この番組を見ると「米中逆転」は間違いないと思えてくる。
ポッドキャストだけではない、主流の論説誌においても、トランプ政権を批判し、その政策がいかに中国を利するか、そしてまた、「米中逆転」を招き兼ねないかを警告する論文が多数、発表されている。
例えば、「フォーリン・アフェアーズ」誌では、保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」(AEI)の外交・防衛政策部長コーリー・シェイクが「トランプ政権のやり方がいまのままでは、世界がアメリカ抜きで生きていくことになる」とし、それが「中国をさらに台頭させる」としている。
また、「ピーターソン国際経済研究所」(PIIE)所長のアダム・ポーゼンは、トランプ外交を批判し、「貿易戦争におけるエスカレーションドミナンス(敵に対し、一方的に多大なコストを課すような方法で紛争をエスカレートさせる能力)は中国のほうにある」と指摘し、「このままアメリカが多大な犠牲(=関税)を払っても中国には勝てない」としている。
この続きは10月3日(金)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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