ニューヨークでの生活では驚きが「スタンダート」と化している。筆者は28歳、昨年の夏に憧れのニューヨークにやって来た新参者だ。日本(神戸)で人生の大半を過ごしたせいか、いちいちビックリするようなことが毎日のように起こるので、文化の違いやカオスな出来事を中心にポップにつづっていくことにした。
〜 お客さまは神さま? 〜
この間、大雨の日にオフィス近くのギリシャ料理フードカーにサンドイッチを買いに行った。それがなかなかの本格的な雨で傘も持っていなかったので、全身ずぶ濡れ。サンドイッチを注文し、支払いを済ませようとしたら携帯が濡れているせいか電子マネーがうまく作動せず、手こずっていた。
するとフードカーのおじさんが「You can pay next time(次払ってくれたらいいよ)」と、注文していたサンドイッチを無料でくれた。
またある日は、薬局で歯磨き粉や必需品を持ってレジに行くと、「メンバーシップは?」と言われ「ないから大丈夫」と答えると(ポイントを貯めることにめんどくささを感じてしまう性分)「登録してあげるわ、この歯磨き粉が安くなるからね」とお姉さんが爆速でメンバーシップ登録をしてくれ、しまいには前の人が残して行ったレシートのクーポンをウインクしながら「ピッ」としてくれた。
前にニューヨークの店員さんは無愛想とか「お客さまは神さま」という概念はこの街には存在しない、などと書いたが、こういった日常を過ごしていて気づいたことがある。
彼ら(店員)は “彼ら” であり”店員” ではない。だからもしかしたら、私たちのことを “客” と見ていないのかもしれないと(笑)。店員 vs 客のコミュニケーションではなく、彼らがしているのは人間同士のコミュニケーション。だからすごく機嫌の悪そうな店員さんもいるし、ビールを買うために見せたIDの日本名を見て、レジそっちのけで日本のことを話したいトレーダージョーズの店員さんもいる。彼らは人間なのだ!

良くも悪くも(笑)野生の人間が埋めく都会のジャングル・ニューヨーク。改めて日本の店員さんとは違うなぁ〜としみじみ感じる。高校生の時、アルバイトを始めてまず教えてもらったのは、お客さんを不快にさせない敬語、そして気持ちよくお会計をしてもらうためのお釣りの渡し方、衛生を保つための掃除の仕方。すべてはお客さまのためである。
もちろん日本のサービスは最高にクリーンでリスペクトフル、とても好きではあるが、なんと言うんだろうか・・・大雨の日に差し出してくれるギリシャサンドイッチには叶わないこともある。日本人として、そして1人の人間として、ニューヨークは学びの多い街である。
筆者のプロフィール

ナガタミユ(Miyu Nagata)エディター/ダンサー
兵庫県出身の28歳。幼少期に観た「コーラスライン」をきっかけに舞台芸術の世界にどっぷりハマって以来、20年以上踊り続けている。また、日本の出版社で編集者として活躍したのち「書いて、踊る編集者」としてさらなる飛躍を遂げるため、2024年8月から拠点をニューヨークに移す。
前回のエピソード
Vol28. アメリカでは相手の年齢を聞かない
Vol27. ラーメン3000円、家賃50万円の街
Vol26. 日本にはあって、この街にはない “男ウケする格好”
続きはこちらから → 過去のエピソード
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